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「えっと……まだ俺達は出会ったばかりだし、ここがどういう場所なのかも全然把握できてない。でも、ここにいる子達を守りながら行動できるのは、同じ立場である俺と君だけなんだよ。だから、その……」
おりえさんから度々視線を外しては、また彼女の目を見る。そんなふうにおどおどしながらも、そうめいくんは続けた。そして、おりえさんも口を挟まずにじっとそうめいくんを見据えている。
「だから……きょ、協力、してくれないかな。っううん、協力、するべきだと思う」
「嫌よ」
ピシャリとおりえさんが言い切った。あまりの言い切りのよさに、そうめいくんも黙ってしまったくらい。
「子供とはいえ、素性も知らない人達を守りたいなんて思えるほど、私って善人じゃないのよ。貴方は違うみたいだけど、そう思うなら勝手にすればいいじゃない。私は一人で出口を探すわ。馴れ合いに時間を費やせるほどの余裕はないんですもの」
「そ、そんなこと言わずに──」
淡々と言葉を紡ぐおりえさんに対し、そうめいくんが言い返そうと口を開いた時だった。
「ああ、彗星の″彗″に、″心″、か……」
突然、おりえさんとそうめいくん以外の静かな声が聞こえた。それは男の子の声で、二人よりも小さな声だったのにやたら響いたように感じたの。
みんなも同じだったみたいで、そうめいくんとおりえさんが動きを止める。
注目を浴びた男の子は表情一つ変えることなく視線を上げた。
「慧眼の″慧″、と聞いて、咄嗟に漢字が、思い浮かばなかったもので……今、ようやく、思い出せました」
「あ、ああ……そうなんだね」
男の子は途切れ途切れに言葉を紡いだ。ほんの少しきょとんとした顔で、そうめいくんが相槌を打つ。男の子はまた表情を変えることもなく、静かな声色で「はい」と頷いた。すると「へえ、」とおりえさんが口角を上げて笑った。
「貴方、随分と賢いのね」
「自分では、よく分かりませんが……ありがとう、ございます」
男の子はおりえさんに軽く会釈をした。たまらず、わたしも声をかける。
「す、すごいよ!わたし分からないもん!えっと……」
わたしが詰まった理由を察したのか、一拍置いて男の子が名乗った。
「ああ、ボクは……
「キョウくんかあ、よろしくね」
えへへ、と笑いかけるわたしに、キョウくんは小首を傾げた。やりとりを見て、おりえさんが踵を返しかけたのを慌ててそうめいくんが引き止めた。
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