揺らぎ【赤】

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やけにテンションが高くなっていて面倒なので、お手洗いに行こうと席を立つ。

部屋が暑かったせいか、妙に火照った頬が鬱陶しかった。





お手洗いを出て、廊下の突き当り。
扉が開いていて他の階に移動できる外階段を見つけた。

こもった空気の代わりに、夜の空気でも吸おうかな。

そう思って扉に手をかけた時。

奥に人の気配を感じた。





かすかに聞こえてくる、


『あー、置いてきたかも』


低い声は、聞き間違えようがない、宮近くんの声。

そのまま固まってしまう。


「はい、どうぞ」


続く女性の声に、心臓を掴まれるような感覚になった。


ライターをつける音。

宮近くんの軽い返事。


「さむいね」

『上着貸そっか…って持ってねぇわ』

「そういうとこ、いつもかっこつかないよね」

『うるさ』


抑えたような笑い声が重なる。

風に乗って漂ってきたタバコの香り。

それだけで、二人がどんなに親密な関係なのか、説明がついてしまったように感じた。




勝手に動き出した足は、迷わず元の部屋へと向かっていく。


「どうしたぁ？ぐあい悪い？」


様子がおかしい私を気遣ってくれるうみくんに、返事をする余裕もない。

しばらくして部屋に帰ってきた宮近くんと、その後ろにロングヘアーの女性。

彼女が入ってきた瞬間、こちらを見るからバッチリ目が合ってしまう。

いや、私がじっと見つめていたから、当然か。




名前も分からない男性の歌声に、思わず泣きたくなってぎゅっと目を瞑る。

そんな私を見て、うみくんはいきなりガッと抱き着いてきた。

そのまま頭を抱え込んでこねくり回される。


「っちょっとなに、ほんとむりむり！！！」
「ギャハハハ！！！」


なにすんのと、髪を手櫛で直しながら睨みつけると元気出せよ、とグラスを手渡された。

本当にこの人は...。

ありがとう、と小さく言って仕返しのために立ち上がった。

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