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「大変やと思うけど、乗り越えろ。
Aのこと、守ってやれるんは、
章大くんだけやから。
俺にはもう、何もしてやれる事はない」


裕さんは、それだけ言うて、
俺の部屋を出て行きはった。



茨の道やて、分かってた。

倫理的にも、道徳的にも。



俺は、A姉ちゃん以上に、

愛せる人なんて、出会えたことがない。


この先も、それは同じやて、
なぜか、本能的に感じてた。


許されるなんて、思ってへん。


罪深いことをして、
地獄に堕ちても、


たった一人の愛する人を守って生きようと、
その日、俺は覚悟した。




25回目の、自分の誕生日に、
関西に戻って、

A姉ちゃんと二人で、
裕さんから預かった離婚届、
役所に出しに行った。

あっけない程、簡単に、
離婚は成立した。




その帰り。

夕暮れの歩道橋を少し離れたまんま、
二人で歩いて。

家に帰ったら、
お母さんは出かけてた。


俺の誕生日ケーキ、
少し遠い評判の店に買いに行くって、
張り切ってたから・・・


縁側で、A姉ちゃんが窓を開けたら、

少しひんやりした秋風が、
部屋の中へと舞い込んできた。


「25年前、章大の生まれたのも、
風のよく通る、心地良い、こんな日やった」


振り返って、俺を見て、
少し笑って。


「私、あの時、決めたんよ。
可愛い可愛いこの子を、
誰より幸せにしてあげようって。
生涯、寂しい想いはさせへん、って」


呟いた、その声は、
ひとりごとみたいに聞こえた。


「それやのに、私が、
章大を不幸にしてしもてるんかな。
重い荷物、背負わせて・・・
章大は自由に生きてええのに。
もっとお似合いの、
好きな女の子を見つけて、
私なんて、忘れ、て、」


掠れたその声をかき消すように、
俺はA姉ちゃんを抱きすくめた。


「そんなこと、言うなや。
知ってるやろ。
俺が、他の誰にも心動かへんこと。
なんべんもなんべんも、努力した。
けど、おんなじこと繰り返しても・・・
結局は、姉ちゃんしか、
・・・Aしかおらんねん。
Aだけしか愛されへん」


運命やって言うたら、人には、笑われる?

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みき(プロフ) - 完全な罪。をちょうど先週読み返させて貰ったところで、更新通知があったので今日も読ませて貰いました!こういうお話もけっこう好きです(//∇//)なので、もし良かったらまたこういうお話も書いて頂けたら嬉しいです。 (2020年12月3日 1時) (レス) id: eb998853f9 (このIDを非表示/違反報告)
みき(プロフ) - 完全な罪。も好きなお話です!公開して下さり、ありがとうございます!foolさんの小説は本当にどれも好きなものばかりで、毎回楽しみです!! (2019年9月20日 21時) (レス) id: ad46af1069 (このIDを非表示/違反報告)
ひ み さ(プロフ) - こういうタイプのお話好きです(*^^*) また機会があったらお願いしたいくらいです 完全な罪も素敵でした、ありがとうございました♪ (2019年9月20日 1時) (レス) id: 6eb2ce4a4e (このIDを非表示/違反報告)
ひ み さ(プロフ) - ボディーガード、この手のタイプの人はホントに怖いと思います…面白いお話でした、ありがとうございました♪ (2019年5月19日 15時) (レス) id: 6eb2ce4a4e (このIDを非表示/違反報告)
yume.no.(プロフ) - コメントする前にどんどん新しいお話が!全部主人公の妄想だったのかー!こわい!倉安の今後が気になるお話☆十祭のエイトレンジャーのブラックヤスくんを思い出しました笑 (2019年5月17日 13時) (レス) id: 716f977705 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:fool x他1人 | 作成日時:2019年4月25日 17時

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