完全な恋人

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「もう１秒も待たれへん・・・」


そんなこと、切なげな瞳で言われたら・・・


答えは決まってる。


私たちは、
甘いキスを交わしながら、

夫婦で使ってるダブルベットに、
沈み込んだ。


横山さんと繋がって、
意識を失いそうな程、気持ちいいのに。


どこかで、雅紀くんのことを想ってる。

やっぱり、この生活は、失いたくない。


でも、横山さんのことも本当に好き。


・・・どうしたらいいん？







裸のまんまで寝落ちして、
ふと物音に目が覚めた。


近付いてくる足音。

嘘。

帰国は明日の夕方のはずやのに、
雅紀くん、もう帰って来たん？


慌てて飛び起きたけど、
時すでに遅し。


「何これ。
なんで、二人が・・・
裸で抱き合って寝てんの？」


青ざめた雅紀くんの声は、
怒りに震えてる。


「横！お前・・・！」


「ん・・・？何？」


「何じゃねーよ！
亭主のいぬ間に、
人の嫁寝取りやがって！」


まだ寝ぼけてる横山さんに馬乗りになって、
雅紀くんがいきなり殴りつけた。


「違うねん、お願い、雅紀くん、聞いて」


「何が違うんだよ。
とんだビッチだな。
すぐに離婚だ。
慰謝料払えよ。
すぐにこの部屋から出てけ」


私が悪いんや。

あんなに優しかった雅紀くんを傷付けて・・・


「ごめんなさい・・・」


雅紀くんに投げつけられた洋服を着て、

真夜中、
着の身着のままで、
横山さんと共に、
高級マンションを追い出された。


「ごめんな、Aちゃん、
俺のせいで・・・」


「ううん。
横山さんのせいとちゃうよ。
出会ってしまったんが、悪かってん・・・」


運命の相手と手を取り合って、
いけない恋の逃避行をする、
悲劇のヒロイン。


今ほど、生きてるって実感したことない。


後悔よりも陶酔の比重が大きい私は、
悪い女なんやろうか。

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