また俺は守れない。02 ページ48
虫の息のオーズがいる場所は最前線だ。一斉に銃がオーズに向けられる。うだうだ悩んでいる暇なんてない。暴れだした心臓を必死に抑えて、空を駆け出す。Aが羽ばたくと同時に動き出した影があった。ど、と湾内から水柱が立ち上り、曲線を描いて包囲壁の向こう側へと飛び込んで行く。
「今、壁の向こうに飛び込んだの、エースの弟だ!!」
下方で聞こえた仲間の言葉に俺は目を丸くした。エースの弟ということは、ルフィだ。たった一人であの敵中に突っ込んだようだ。ルフィの勇気はやはり俺には真似できないと思う。
「Aッ!"切り札"だ!ぼやっとしてねェで、俺らは先行してエースの弟のフォローするよい!!」
「りょ、了解!」
青い炎を散らしながら羽ばたき、此方に近づいてきたマルコにAはこくりと頷く。"切り札"、つまり最後の黒いモビーの事だ。事前に話を聞いていたAは瞬時に理解し、自分よりほんの少し前を飛ぶマルコの後を追いかけた。
今にも振り下ろされようとしている二本の刀を見て心臓が冷たくなる。ルフィは黄猿に足止めされていて、とても処刑台へとたどり着けない。Aとマルコも全速力で飛んだとしても届かないくらいに距離が開いている。
「エーーーーースゥ!!!」
名前を叫び両翼に力を籠めた。マルコを追い抜かし、エースのいる処刑台へを目指す。向かってくる砲弾と銃弾を自分でも驚くほどの反射神経で避ける。処刑台にいたカモメを頭に乗せた男が顔を険しくして、Aを睨んだ。
「エース……!!」
後三十メートル。呼吸する間も惜しい。
処刑台で膝をつくエースが何かを堪えるように唇を噛み、此方を見つめている。
(絶対、絶対助けるから……!)
Aはただそれだけを考えて飛んだ。
「やれ!」
カモメの男が命じると処刑人が刀を高く掲げた。交差するように掲げられた二本の刀がギラリと鈍い輝きを放つ。
後十メートル。あともう少し、間に合ってくれ。歯を食いしばり、翼がちぎれそうになるくらい羽ばたいた。翼の付け根が熱を持ち、赤が滲む。それでも止まれなかった。
ヒュッ――
刀が空を切る音がして、まっすぐにエースの首へと振り落される。後五メートル。息が詰まりそうになった。諦めたように俯いたエースから、光るものが落ちる。
また、俺は守れない、の……?
ぴたん、と一粒のしずくが跳ねた。
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1(プロフ) - × ×さん» お読みいただきありがとうございます!ここからは展開がとても早くて、もうちょっとでラストです(*^^*) (2021年4月19日 20時) (レス) id: d447c4ab55 (このIDを非表示/違反報告)
× ×(プロフ) - 二日遅れてしまいましたけど、読ませていただきました!ここから展開がどうなるのかワクワクドキドキです! (2021年4月16日 10時) (レス) id: 9bb4cee45f (このIDを非表示/違反報告)
1(プロフ) - × ×さん» コメントありがとうございます!とても励みになります(*^^*)本日更新致しましたのでぜひ読んでいただけると幸いです! (2021年4月14日 19時) (レス) id: d447c4ab55 (このIDを非表示/違反報告)
× ×(プロフ) - とても面白いです!更新楽しみに待ってます-_-b (2021年4月13日 2時) (レス) id: 9bb4cee45f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:1 | 作成日時:2021年4月9日 0時