また俺は守れない。01 ページ47
ガコンと鈍い音を立てて巨大な壁が四方に立塞がった。先ほどからちらほらと聞いていた"包囲壁"というのはこれのことだったようだ。壁に取り付けられた幾つもの砲口が全て此方に向いている。飛行能力のある俺、マルコなら高い包囲壁も乗り越えられるだろうが、他の仲間では到底無理だろう。
いや、一箇所だけ包囲壁が上がっていない場所があった。オーズが倒れているところだ。あそこなら他の船員も上がれる。気付いた仲間がオーズの元へ駆け出していくよりも前に海軍が動き出す。
「"流星火山"」
拳の形をした溶岩が湾内に降り注ぎ、凍りついた海を溶かし足場を奪い、モビーを叩き潰していく。白いモビーも黒いモビーも、全て。メインマストが折れ、船首がぐしゃりとひしゃげて海へと沈む。俺の大切な場所が一瞬にして破壊される。
「モビー…」
赤い炎に包まれて沈んでいくモビーに、楽しい記憶も苦しい記憶も幸せも何もかもが消えてしまったような錯覚がした。きゅっと唇を噛み、胸の奥から溢れ出しそうになるものを堪える。
足場を失い海に浮かぶ無防備な仲間に向けて容赦なく砲弾が打ち込まれる。水柱があちこちに立ち昇り、足場のない海では成す術もなく仲間は沈んでいき一気に形勢は海軍側に傾いた。
僅かに残っていた氷にいたお父さんは沈みゆくモビーを見つめほんのわずかに悲しげな色を見せたが、すぐに険しい表情に戻り、聳え立つ壁に向けて能力を叩き込む。ベゴン、と大きな音を立て、壁がへこんだが破壊するまでには至らなかった。島を傾かせるほどの力を持つお父さんの拳が通用しないとなると、普通の壁ではないようだ。
『作戦はほぼ順調。これより速やかにポートガス・D・エースの、処刑を執行する！』
「なっ…！」
壁の向こうから聞こえてきたアナウンスにAと白ひげ全軍に激震が走る。
アナウンスを聞き氷の上にいて無事だった仲間達が一斉に駆け出した。向かう先は唯一壁が上がっていないオーズが倒れている場所だ。当然、海軍もその穴を見逃すはずがない。砲弾が絶え間なく打ち込まれ、此方の侵入を阻んでいる。
危険は承知で、俺だけでも飛んで向かったほうがいいかもしれない。敵中に突っ込むのは怖い。だが、エースが殺されたら俺たちが戦っている意味の何もかもが泡に消えてしまう。
Aが悩んでいるうちにも事態は進み、倒れこんでいたオーズがのっそりと巨大な身体を起こした。しかし、オーズは身体を起こすだけで精一杯のようで荒い呼吸を繰り返している。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 78人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
1(プロフ) - × ×さん» お読みいただきありがとうございます！ここからは展開がとても早くて、もうちょっとでラストです(*^^*) (2021年4月19日 20時) (
レス) id: d447c4ab55 (このIDを非表示/違反報告)
× ×(プロフ) - 二日遅れてしまいましたけど、読ませていただきました！ここから展開がどうなるのかワクワクドキドキです！ (2021年4月16日 10時) (レス) id: 9bb4cee45f (このIDを非表示/違反報告)
1(プロフ) - × ×さん» コメントありがとうございます！とても励みになります(*^^*)本日更新致しましたのでぜひ読んでいただけると幸いです！ (2021年4月14日 19時) (レス) id: d447c4ab55 (このIDを非表示/違反報告)
× ×(プロフ) - とても面白いです！更新楽しみに待ってます-_-b (2021年4月13日 2時) (レス) id: 9bb4cee45f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：1 | 作成日時：2021年4月9日 0時
