【刀剣乱舞】菊の花は乱れ咲く。 (ページ17)

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菊十七ページ17

こつ、こつ、こつ...と足音が響き渡る。此処は時の政府の本部。大きなエントランスホールはたくさんの審神者と呼ばれる者たちと刀剣男士たちで溢れかえっていた。彼らは、ホールの真ん中を横切る私を見て息を潜めている。

向けられる視線は、欲と恐れ。

...けして自惚れてはいないが、私自身の神気は大きなものだとは思う。例え、尋常ではないほどの神気を持つものが言霊で縛ろうとしたとしても、ある程度は耐えられるほどのもの。

どろりとした感情。卑しいこちらに向けられる不躾な視線...不快。

「...どうか、お収めください」

私が来ていると知ってか、急いてきた狐面の審神者と、スーツ姿の三日月宗近。その二人は視線を遮るように私の両側へとつく。

「分かっています」

口角を少しだけ上げてから、顔を無表情へと戻す。

それにしても、この場所は居心地が悪い。瘴気が立ち込め過ぎではないのか？こんなにも多くの付喪神や審神者が集まっているというのに、穢れすぎている。

「ようこそおいで下さいました。山鳥毛一文字本霊様」

「私がわざわざここまで出張ってきたのです。それだけの意味を持つということをほかの者たちにも言い聞かせておくのですね」

「耳の痛い話です」

エントランスを抜けると、何だかたくさんの装飾が施された部屋に通される。その場所には政府の者たちがたたずむ。それぞれに一人ずつ刀剣男士がついて、要人の守護は万全ともいうべきか。

「ようこそおいで下さいました」

「さて、今回は政府と本霊様の分霊降臨の契約についての会談となります。会談を放棄することは契約の破棄と同様であることはご理解を願います」

「この契約書にお互いの神気を込めて頂きます。本霊様は神気を多めに込めてください。でないと、侍従契約のようなものになってしまいますので」

中央に立つ男と両側に立つ女が声を発す。

「あい分かった」

「では」

ぽた...ぽた、そんな音を立て、契約書に血を垂らす。

垂れた場所から、淡く光りはじめる。

「これにて、契約は完了となります」

episode１：完