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「土井先生、山田先生。どうしたんですか」
開かれた障子の向こうには、男の人が二人立っていた。
片方は若い人で、もう片方は髭を生やしていておじさんくらいの歳に見える。
どちらも黒い忍び装束を来ていて、伊作さんの深緑色のよりもっと夜と同化していた。
「ああ、山本シナ先生。学園長先生から彼女に渡すよう頼まれたものがありまして」
髭を生やしている方の人が要件を伝える。
「お邪魔しちゃいましたか」
もう一人が申し訳なさそうに笑う。
「いいえ。それで、渡したいものって?」
「学園長先生がAさんの家に学園で預かるという旨の文を出すそうなのですが、その時にAさん自身書いた文も一緒に出す方が良いとのことでして」
「なるほどね。わざわざありがとうございます、山田先生。私から説明して渡しておきます」
山本先生が山田先生と呼んだ方から、何かを受け取ったのが見えた。
「お願いします」
山田先生じゃない、となると土井先生の方が頭を下げる。
そして「失礼しました」と2人揃って障子の前から去っていった。
山本さんはこちらを振り向きながら、障子を閉める。
「Aちゃん、あなたに自分の家宛てに手紙を書いて欲しいそうよ」
「…手紙、ですか」
「Aちゃんの字の手紙もあれば、あなたを迎え入れてくれた家の方も安心するんじゃないかしら。
何より、自分の言葉で近況を報告できればAちゃん自身も安心でしょう」
「……そうですね」
本当は適当に理由をつけて文を出すのは取りやめてもらうつもりだったが、山本さんの言うことはもっともだった。
ここで変なことを言えば怪しまれてしまうだけな気がして、素直に頷くことにする。
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作者名:加糖 雪 | 作成日時:2021年4月6日 16時