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「小松田くん。どうしたんだい?」
部屋の前で止まった小松田に、土井先生が振り返る。
「土井先生。利吉さんを探してて…」
小松田はそこから部屋の中を覗き込み、利吉の姿を認めると「あ、利吉さんいた!」とそちらに視線をやった。
「利吉さん、学園長先生がお呼びですよ」
学園長先生が?と3人は顔を見合せた。
*
学園長先生の庵にて。
呼び出された利吉が立つ前で、学園長先生は机に向かっていた。
「これでよし、と」
利吉とヘムヘムが見守る中で、学園長先生は文に印を押した。
「学園長先生、私に御用があると伺ったのですが…」
「うむ。そうじゃ。実は頼みがあって…」
学園長先生は言いながら、文の紙を折りたたむ。
そして懐からもう一通、文を取り出すと2つ重ねて利吉の方へ差し出した。
「この文を二通とも同じ場所の同じ人へ届けて欲しい」
利吉は手紙を少しばかり見つめたあと、手を伸ばしてしっかりと受け取った。
「…宛先は」
「おおっと、忘れるところだった。この場所じゃ」
そして、場所の書かれた紙をまた懐から取り出して利吉に渡す。
「急ぎで、なるべく早い目にお願いしたい」
「承知致しました」
二つ返事で了承し、利吉は紙に書かれた場所を軽く確認する。
(…ああ、あの辺りなら…今度の忍務の場所と近い。下見ができそうだ)
考えながら、受け取った二通の文を丁寧に懐へ仕舞い込んだ。
「急にすまんのう。本当は先生の誰かに頼もうと思っていたんじゃが、みんな忙しそうで頼みづらくて…」
学園長先生は、「授業が遅れてしまいます!」と困りながら自分に文句を言ってくる先生たち(主に土井先生と山田先生)の顔を思い浮かべる。
「いえ、これでもフリーのプロ忍者ですから。依頼ならご遠慮なく」
利吉は屈託なく笑った。
「それじゃあ、頼んだぞ」
「はい」
真っ直ぐな返事で会話は終わり、利吉は気を引き締めつつ庵を出た。
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作者名:加糖 雪 | 作成日時:2021年4月6日 16時