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「伊作先輩は忍術学園で“不運大魔王”と呼ばれているくらい不運なんです。
そして保健委員会には同じく不運な忍たまが集まるので、周りからは“不運委員会”とも呼ばれていたりして…」
そこまで言うと、保健委員の皆が揃って「はあ…」と大きくため息をついた。
「っておい!落ち込んでるバヤイじゃないだろう!急ぐぞ!」
留三郎さんが困りながら叫ぶと、「はいっ!」と伊作さん以外の子たちが姿勢を正して部屋の外へと猛スピードで駆け出していく。
「俺たちも行くぞ」
「うん」
言いながらこちらにやってきた留三郎さんに、再び私の分のお盆を手渡す。
「…A、騒がしくしてしまってすまない。…その、お大事にな」
「ごめんね、Aちゃん…」
「気にしないでください」
頷く伊作さんのもとに留三郎さんが戻ると、後輩の後に続いて走り出そうとする。
急ぎ足な2人に、私は慌てて声をかけた。
「あ、あの!ありがとうございます!」
(…今の私には、お礼を伝えることしか出来ない…)
伊作さんと留三郎さんは、2人とも私にふ、と柔らかく笑うと、開けた時とは対照的に静かに障子を閉めて、あっという間に走り去ってしまった。
(なんだか、嵐のように去っていった…)
私は閉ざされた障子を眺めながら、息をついた。
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作者名:加糖 雪 | 作成日時:2021年4月6日 16時