格子から見上げる世界 壱 青×緑 桃×赤 橙×黄

No.42 ページ41

「ハハハハ…

黃珀は、ほんに話し上手やし、聞き上手やし

今日も楽しませてもろたわ」


 

 

一通りお酒も嗜み

 

楽しく会話も弾み

 

 
 

そろそろという雰囲気になる

 

 

 



 

「では失礼します

濱田様、黃珀姐さん」

 

 
 

もう一度深々と頭を下げ

 

お座敷を後にする

 

 


 

「緑翠…

綺麗な舞やったよ

また、披露しておくれな

今度は、ここにはおらん、別の誰かを想ってやなくてな」

 

 

「………」

 

 



何をご冗談を

 

濱田様は面白いことを仰るんですね

 

そう、笑って流せば済むのに



 

言葉を発しようとしても、喉に張り付いて

 

何も出てこない

 

 


 

柔和な笑みなのに

 

どこか冷たく、何もかも見透かされてしまうような

 


あの瞳に見つめられて

 
 

「濱田様

まだ、見習いの新造を揶揄わんといてください

クスクス…お人が悪いわ

冗談を言って、うぶな反応を楽しんではりますね

私みたいに、年季の入った年増やと

こないな、可愛らしい反応が返ってきませんものね」

 


 

黙り込んでしまった俺に、助け舟を出すように

 

饒舌に淳太くんが話し出す

 



「ハハハハ…

黃珀には、かなわへんな

年増やなんて思ったことないで

綺麗で色気もあって、床上手で

俺は黃珀に惚れ込んでるで」

 

 

「口のお上手な、濱田様には乗せられませんからね」

 


 

「信じてくれないなら

体で教え込むよ

ほら、黃珀…」

 

 

 

濱田様に淳太くんが腕を引かれ

 

床へと横たえられる

 


 

淳太くんと瞳が合い

 

大丈夫やから出ておいきと訴えられる


 

 

 

俺はそのまま、逃げるように自分の部屋へと転がり込んだ

 




 

淳太くんが耳元で濱田様に囁かれている言葉なんか知る由もなく

 

 
 

『緑翠の心の中には好いた男がおるな

あぁ…その心の中の男も、純粋な気持ちも

壊してしまいたくなるな…』

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