格子から見上げる世界 壱 青×緑 桃×赤 橙×黄

No.24 ページ22

「あっ…

ごめんなさい

お客様に失礼な物言いをしてしまいました」

 

 

 

 

「いや！緑翠さん

俺は…あっ、僕はその方が嬉しいです」

 

 


 

「クスクス…

私も僕って言ってはる流星さんより

俺って言ってはる流星さんの方が好き

緑翠って呼んで…

流星」

 

 

 

 

なんやろ

 

こんなやり取り

 

 

正直お客様やと、ご機嫌をとるために

耳障りの良い言葉を並べて

 

作った笑顔を顔に貼り付けて

 

 

その場限りの、作られた会話をするのに

 

 

 

流星にはそのままの俺で返してしまう

 

 

 

 

そんな事を考えていると

 

 

 

 

 

「緑翠…」

 

 

 

名前を呼ばれ

 

真っ直ぐに見つめられ

 



ゆっくりと頬に手が伸び

 
 

大きな手で柔らかく包み込まれる

 

 

 

「ほんまに綺麗や…

もう一度呼んで…名前を

流星と…」

 


 

「流星」

 

 

 

 

「大丈夫…何もしないよ

約束したからね

黃珀さんと

黃珀さんを怒らせると、おっかなそうだからね」

 

 

 

 

 

表情を緩めてそんな事を言う

 

 

 

 

「クスクス…怒られてまうよ

黃珀姐さんに」

 

 

 

 

 

「あっ、もちろん内緒にしといてや

黃珀さんを怒らせると、ここに出入りさせてもらえへん気がする」

 

 

 
 

しー

 

人差し指を自分の唇に当てておどけてみせる、流星

 

 

 

「しー」

 

 

 

俺も真似をして一緒に笑う

 

 

 

 

あぁ…楽しいな

 

自然とそんな事を思っていた

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