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上の方から降ってくる宿儺の声。
視界には逆さまの悠仁君。
「何匹湧こうが虫は虫だな。」
───違う、私が逆さまなんだ。
気がつけば掴まれていた右足首。文字通り足元を掬われた私は今屍の山の上で宙吊り状態である。いや普通に怖い。
「…………あのー、降ろし」
「断る」
「そんな食い気味に言わなくても」
まあ喧嘩を売って返り討ちに合わないだけまだマシか。三枚おろしにでもされたらどうしようかと。
……いや、でも、この体勢は少しきつい。頭に血が上るのもあるけど、この空間内での私は一応制服なわけで。タイツは履いてるけど、ね?あの、絵面的に、ね?
「…………っ、!」
泳がせていた視線が悠仁君とかち合った瞬間、彼が一気に顔を赤らめてそっぽを向いた。
は?何?可愛いんだが??
「こんな貧相な体相手によく欲 情出来たものだな」
「こんなって言うなこんなって!!」
「……てか宿儺!さっさと橘から手離」
「おわっ、」
悠仁君が言い終えるよりも先、ぶん、と勢いよく払われた手に従って一気に山から身が落ちる。
色気のない一言に次いでばしゃ、と鈍い水温。
温かいと思ったら、悠仁君が私を受け止めてくれたらしい。あ、待って距離が近い。結婚しようか。
「小娘」
「あ、はい。」
「お前達の身に何が起こってるか、猿でも分かるように小僧に説明してやれ。」
「猿でもわかるようにってそれ遠回しに悠仁君のこと猿よば」
「早くしろ」
「御意」
ゆっくりと身体を起こしつつ、悠仁君に取り敢えずの事情を聞き出す。
彼もまた彼で目が覚めたら私が体の中に入り込んでいたらしく、「入れ替われ」の叫び声を聞いて宿儺と同じ要領で入れ替わってくれたらしい。なんて出来た子なんだ。
そして入れ替わった先。宿儺の相手をせざるを得なくなった悠仁君は、宿儺に現状を尋ねるも理解に及ばず。
そして遂に彼を怒らせてしまったらしく。
成程、だから椅子にされてたのか。
……まあそれもそうか。どんなにわかりやすい説明を受けたとて、それが“分かる”のと“受け入れる”じゃ全くの別物。
「……橘、俺たちどうなってんの?」
子犬のように眉を垂らした悠仁君。
心臓に悪いからやめて欲しい。
……猿にも分かるように、か。
「───……どうなってるんですか?」
今わかった。私多分猿以下だ。
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梅鉢朝桜 - 宿儺様ぁ…(泣) 愛してます、もう本当に…。素敵な作品をありがとうございます!!! (2023年4月26日 23時) (レス) @page43 id: 5a6192c453 (このIDを非表示/違反報告)
レナート(プロフ) - 好き……泣きました。。最高過ぎます…。こんな素晴らしい神作をありがとうございます…。 (2022年3月31日 2時) (レス) @page43 id: 3e48fe4f1f (このIDを非表示/違反報告)
ゆいゆい - なんか原作で泣いたことないのに二次創作で泣くのなんで?特に宿儺と夢主ちゃんが最後話していたところが感動しました!応援しています! (2021年8月10日 14時) (レス) id: de4752e106 (このIDを非表示/違反報告)
好きです大好きです - えっ、何でしょうもうなんか凄かったです(;;)色んな夢小説を拝見していましたが、こんな素晴らしい作品初めて会いました!!本当に素晴らしい作品だと思います、読んでいるうちに情景がすんなり頭に思い浮かんじゃいますよ!お2人が幸せになることを祈ってます(^^♪ (2021年7月23日 17時) (レス) id: fdb8e911e1 (このIDを非表示/違反報告)
睡眠時間 - 途中で全てに気づいた瞬間、グッと溢れ出てきた感動、それと同時に作者様の素晴らしさを目の当たりにした。まるで、全てを見透かされていたかのような、先回りされた感じ。←ポエマーしてみました 一言言うと、最高でした大好きですありがとうございました!!!! (2021年4月20日 0時) (レス) id: ee5607c705 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ゆき | 作成日時:2021年2月9日 22時