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───そうして冒頭に至る、訳だが。
いやいやいやいや、待て。一回落ち着こう。息を吸って、そう。ゆっくり吐こう。
…………いや、冷静に無理なんだが?
「やばい……尊い…………、」
「あ?」
「え、無理。悠仁君に睨まれてるよ、やばい。」
「虫けらのような小さい声で話すな、耳に障る。」
良かった、内容までは聞こえてないみたい。
いや、それはそうとして。
まず一つ分かったこと。私だってだてに呪術師をやっていた訳じゃないから分かる。ここは多分現実じゃない。悠仁君の心の中……?だろうか。
兎に角この空間での傷や生死は現実に反映されないはず。だから幾ら特級とは言え、そこまでの警戒はいらない訳で。
そして二つ目。悠仁君に受肉した宿儺は勿論その外見に彼が反映している。細部の違いは見受けられど、体や目鼻立ちは紛うことなき悠仁君本人のものだ。
推しの顔。推しの体。
「ありがとう神様…………。」
いっつも神様の馬鹿野郎とか言ってごめんね。
今度お賽銭もって行きますね、5円くらい。
「おい、小娘。」
いや、この状況に興奮しない訳が無いでしょう。
だって悠仁君は素直な純情ボーイで、まあ類稀なる程の善人だ。
人を無闇矢鱈に嫌うことは先ずないし、暴言を吐くことも無い。反抗期というのがあったかも定かではないし。
「聞いてるのか」
そんな聖人君子の虎杖悠仁に今、見下ろされ、蔑まれ、罵られている。しかも顎クイのオプション付きで。
……あー、本当に死ねる。と言うかもしかして現実の私死んでる?今思えば悠仁君とすごい勢いで頭ぶつけちゃったしなぁ。悠仁君、大丈夫かな。
「────おい」
「ひゃっ、」
不意に耳にかかる息。
怒気を孕んだ低い声が、地を這うように響き渡った。
「何度も言わせるな。その耳は飾りか?」
逃げようとしても、首根っこを掴まれて持ち上げられてしまいどうしようも無い。
……うわ近い。顔が良い……、てか私持ち上げられてるじゃん何そのファンサ。
「───舐めてると殺すぞ、小娘。」
「…………あ」
そうだ、馬鹿か、私は。
何で今の今まで、忘れてたんだ。
「まずはその減らず口から潰してやろうか。」
こいつは、呪いの王なんだ。
血も涙もない化け物。
……となれば、残された道はひとつ。
「悠仁君!!!入れ替わって!!!」
逃げよう。
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梅鉢朝桜 - 宿儺様ぁ…(泣) 愛してます、もう本当に…。素敵な作品をありがとうございます!!! (2023年4月26日 23時) (レス) @page43 id: 5a6192c453 (このIDを非表示/違反報告)
レナート(プロフ) - 好き……泣きました。。最高過ぎます…。こんな素晴らしい神作をありがとうございます…。 (2022年3月31日 2時) (レス) @page43 id: 3e48fe4f1f (このIDを非表示/違反報告)
ゆいゆい - なんか原作で泣いたことないのに二次創作で泣くのなんで?特に宿儺と夢主ちゃんが最後話していたところが感動しました!応援しています! (2021年8月10日 14時) (レス) id: de4752e106 (このIDを非表示/違反報告)
好きです大好きです - えっ、何でしょうもうなんか凄かったです(;;)色んな夢小説を拝見していましたが、こんな素晴らしい作品初めて会いました!!本当に素晴らしい作品だと思います、読んでいるうちに情景がすんなり頭に思い浮かんじゃいますよ!お2人が幸せになることを祈ってます(^^♪ (2021年7月23日 17時) (レス) id: fdb8e911e1 (このIDを非表示/違反報告)
睡眠時間 - 途中で全てに気づいた瞬間、グッと溢れ出てきた感動、それと同時に作者様の素晴らしさを目の当たりにした。まるで、全てを見透かされていたかのような、先回りされた感じ。←ポエマーしてみました 一言言うと、最高でした大好きですありがとうございました!!!! (2021年4月20日 0時) (レス) id: ee5607c705 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ゆき | 作成日時:2021年2月9日 22時