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その後も形式的な質問が二度三度私たちの間を行き来したかと思えば、「直に施設の人が迎えに来る」と言い残して看護師は部屋を後にした。
そう、だったか。
私には親がいない。だから私が数ヶ月寝こけても、心配する人は、まあいなくって。
相変わらず痛みが後を引く頭を摩る。
後遺症とか、残らないといいんだけど。
「…………あ、れ」
ふ、と。
起き上がった私は反射的にポケットを探り、直ぐにそこが空であると気がつく。
と同時、自分が探し求めていた物を理解して部屋を見渡した。
スマホだ。
流石は現代人というか、何というか。
ベッドの小脇に置かれたテーブルの上に、恐らく私のものであろうスマホが置いてある。
明るくなった画面。当たり前ながら、どこか見覚えのある待ち受けと、その上に浮かぶ数字の羅列。
11月 1日
眠りにつく前の頃は未だハッキリとしないけれど、随分と時間が経っていることだけはわかる。
指紋で開いたロック。
特に何を見るわけでもなく画面をなぞる。
そうして私の指が行き着いたのは、溜まりに溜まったメッセージアプリではなかった。
写真だ。
「…………。」
一番に目に入ったのは、桜色が僅かに眩しい笑顔の素敵な男の子。
一枚ばかりじゃない。
遡っても遡っても、どの写真にも必ずその子がいた。
一人だったり、友達が写っていたり。
時には目隠しをした背の高い人や、パンダの着ぐるみを来た人も目に入る。
男の子の写真が尽きる前に、私は興味がなくなって画面を落とした。
落として、そうして秋の匂いを運ぶ風を眺めながら、欠伸をひとつだけ。
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「…………誰だったんだろう、あの男の子。」
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梅鉢朝桜 - 宿儺様ぁ…(泣) 愛してます、もう本当に…。素敵な作品をありがとうございます!!! (2023年4月26日 23時) (レス) @page43 id: 5a6192c453 (このIDを非表示/違反報告)
レナート(プロフ) - 好き……泣きました。。最高過ぎます…。こんな素晴らしい神作をありがとうございます…。 (2022年3月31日 2時) (レス) @page43 id: 3e48fe4f1f (このIDを非表示/違反報告)
ゆいゆい - なんか原作で泣いたことないのに二次創作で泣くのなんで?特に宿儺と夢主ちゃんが最後話していたところが感動しました!応援しています! (2021年8月10日 14時) (レス) id: de4752e106 (このIDを非表示/違反報告)
好きです大好きです - えっ、何でしょうもうなんか凄かったです(;;)色んな夢小説を拝見していましたが、こんな素晴らしい作品初めて会いました!!本当に素晴らしい作品だと思います、読んでいるうちに情景がすんなり頭に思い浮かんじゃいますよ!お2人が幸せになることを祈ってます(^^♪ (2021年7月23日 17時) (レス) id: fdb8e911e1 (このIDを非表示/違反報告)
睡眠時間 - 途中で全てに気づいた瞬間、グッと溢れ出てきた感動、それと同時に作者様の素晴らしさを目の当たりにした。まるで、全てを見透かされていたかのような、先回りされた感じ。←ポエマーしてみました 一言言うと、最高でした大好きですありがとうございました!!!! (2021年4月20日 0時) (レス) id: ee5607c705 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ゆき | 作成日時:2021年2月9日 22時