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薄らと開けた目の先は、瞼の裏と変わらぬ暗闇だった。
一瞬理解に後れ、しかしまあ起きる理由もないだろうと目を閉じたのが悪かった。
「───起きろ、小娘。」
ざわりと、耳を撫でるような低い男の声。
…………男?
覚醒しきらぬ頭で考えてみれど、私の寝床に入り込むような男性はまあいない。
五条先生なら女子寮に入る可能性も無くは……って、ああいや、そんな話は置いといて。
いやそれよりも小娘て。何様だよお前は。
これでも一応女子高生やってるんですがね。
「聞こえないのか、愚図が。」
「っ、……!!」
ドクン、と。心臓が大音量で警告を鳴らしたのが分かる。
飛び跳ねるように起きて、声のする方から距離を取って姿勢を整える。
覚めた。確実に目が覚めた。何者かはわからない。それでも確かにわかる。感じる。あの、拭いきれぬ存在感は、
「ほう、随分と活きのいい娘だなぁ。」
「だ、誰……!!」
声のする方を見ても既にそこに人の影はない。
……それよりも、どこだここ。
人の肉のような暗い赤を背景に、アーチ状の骨が天井を伝っている。それこそ人体の中に入り込んでしまったようなこの異空間。積み上げられた屍は趣味の悪すぎる。
私、何でこんなとこに。
痛む頭で考える。今日は朝から任務があって……悠仁君と一緒で、浮かれてて……そして、
「……俺が分からぬとは。お前、それでも呪術師か?」
「意味わかんない……、どこ居んのよ!!その偉そうな態度改めさせてやるから!!」
くるくると体を翻しながら周りを見ても、やはり不気味な空間が果てしなく続いているだけで声の主は見当たらない。
くつくつと喉を鳴らして笑う声。
本当に、何者なんだ、こいつは。
……そもそも、ここは。
「───口の利き方には気をつけろ、人間。」
「ッ、……!」
耳元で揺れた声。
すぐさま振り返って、攻撃態勢。
…………攻撃、態……勢。
「…………悠仁、…………君?」
屍の山の上。口調通り偉そうな態度の男は、私のよく知る“彼”で。
「小僧に間違えられるとは心外だな。」
真っ赤な瞳。
顔に浮かぶ模様。
かきあげられた前髪だとか。
「────両面宿儺。それが俺の名だ。」
両面宿儺……、特級…呪物。
これが……こいつが、あの……。
「…………かっけぇ」
朗報です。推しがドSになりました。
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梅鉢朝桜 - 宿儺様ぁ…(泣) 愛してます、もう本当に…。素敵な作品をありがとうございます!!! (2023年4月26日 23時) (レス) @page43 id: 5a6192c453 (このIDを非表示/違反報告)
レナート(プロフ) - 好き……泣きました。。最高過ぎます…。こんな素晴らしい神作をありがとうございます…。 (2022年3月31日 2時) (レス) @page43 id: 3e48fe4f1f (このIDを非表示/違反報告)
ゆいゆい - なんか原作で泣いたことないのに二次創作で泣くのなんで?特に宿儺と夢主ちゃんが最後話していたところが感動しました!応援しています! (2021年8月10日 14時) (レス) id: de4752e106 (このIDを非表示/違反報告)
好きです大好きです - えっ、何でしょうもうなんか凄かったです(;;)色んな夢小説を拝見していましたが、こんな素晴らしい作品初めて会いました!!本当に素晴らしい作品だと思います、読んでいるうちに情景がすんなり頭に思い浮かんじゃいますよ!お2人が幸せになることを祈ってます(^^♪ (2021年7月23日 17時) (レス) id: fdb8e911e1 (このIDを非表示/違反報告)
睡眠時間 - 途中で全てに気づいた瞬間、グッと溢れ出てきた感動、それと同時に作者様の素晴らしさを目の当たりにした。まるで、全てを見透かされていたかのような、先回りされた感じ。←ポエマーしてみました 一言言うと、最高でした大好きですありがとうございました!!!! (2021年4月20日 0時) (レス) id: ee5607c705 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ゆき | 作成日時:2021年2月9日 22時