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20. ページ22

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ずっと昔の話です。



ある春の溶けた日、名も無き村に静寂を連れてこの世にやってきた赤子がおりました。

麗らかな春の陽気はいっぺんに消えてしまい、鳥の囀りまでもが落ちて。
村人達は顔を顰め、母親はその子供を見た瞬間呪われたように忽ちに絶命してしまったのです。


その赤子は、顔が二つ、腕が四本ありました。


産声一つ上げずにこの世に生を受けた赤子を、人人は忌み嫌いました。



とある呪術師は言いました。

この赤子を生かしておけば必ず厄災が降りかかると。


また別の呪術師は言いました。

殺してしまえば自分たちがこの赤子に呪われてしまうと。




村人は、その子供を村外れの山の奥、誰も寄り付かない蔵へと幽閉したのです。




赤子は少年へとなりました。

毎日毎日食事を運んでくる人間はいれど、誰一人として少年と口を聞くことは愚か、目を合わせようともしませんでした。

少年は独りでした。


しかし、何一つ悲しくはなかったのです。

人が自分を忌み嫌うように、少年も人間を嫌いでしたから、少年にとって人の寄り付かないその蔵は存外悪いものではなかったのです。





少年がこの世に落とされてから、何度目かの春がやって来ました。

時の移ろいと共に青年へと育った男の元。ある一人の若い女がやって来ました。

膝を折り、小さな頭を地にこすりつけ、細々とした声でこう言うのです。





「貴方の妻になる、───と言います。」





男は直ぐに、彼女が村人の差し金であると悟りました。それと同時に、人間の愚かさを痛感したのです。


少女の手には、足には、首には。固く固く縛られた縄の痕が痛ましく記憶されていたのですから。





「どうか、よろしくお願いします。」





男が妻を所望したことなど一度もありませんでした。

何より男は人間が嫌いでしたから、この先ずっと一人ならばそれ以上は望まなかったのです。

それでも、村人は女を寄越しました。

ボロボロの服に、化粧の一つも知らない肌。赤切れの目立つ指先は、彼女の生い立ちを知るには十分過ぎました。


村の人間が己をなんと言っているか、男は知っておりました。

噂は渡り歩くほどに大きくなることも知っていました。

呪われた赤子と呼ばれていた男は、いつしか呪いを齎す男へと変わっていたのです。
村人はあることないこと騒ぎ立てます。男が人を食うとまで言うのです。



彼女は、生贄として男に差し出されたのです。



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設定タグ:呪術廻戦 , 両面宿儺   
作品ジャンル:恋愛
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梅鉢朝桜 - 宿儺様ぁ…(泣) 愛してます、もう本当に…。素敵な作品をありがとうございます!!! (2023年4月26日 23時) (レス) @page43 id: 5a6192c453 (このIDを非表示/違反報告)
レナート(プロフ) - 好き……泣きました。。最高過ぎます…。こんな素晴らしい神作をありがとうございます…。 (2022年3月31日 2時) (レス) @page43 id: 3e48fe4f1f (このIDを非表示/違反報告)
ゆいゆい - なんか原作で泣いたことないのに二次創作で泣くのなんで?特に宿儺と夢主ちゃんが最後話していたところが感動しました!応援しています! (2021年8月10日 14時) (レス) id: de4752e106 (このIDを非表示/違反報告)
好きです大好きです - えっ、何でしょうもうなんか凄かったです(;;)色んな夢小説を拝見していましたが、こんな素晴らしい作品初めて会いました!!本当に素晴らしい作品だと思います、読んでいるうちに情景がすんなり頭に思い浮かんじゃいますよ!お2人が幸せになることを祈ってます(^^♪ (2021年7月23日 17時) (レス) id: fdb8e911e1 (このIDを非表示/違反報告)
睡眠時間 - 途中で全てに気づいた瞬間、グッと溢れ出てきた感動、それと同時に作者様の素晴らしさを目の当たりにした。まるで、全てを見透かされていたかのような、先回りされた感じ。←ポエマーしてみました 一言言うと、最高でした大好きですありがとうございました!!!! (2021年4月20日 0時) (レス) id: ee5607c705 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ゆき | 作成日時:2021年2月9日 22時

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