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「死」の一文字が頭の中を一部の隙もなく埋めていく。さあっ、と血の気が引いていく頭。指先に至ってはもう動きそうにない。
笑いが堪えきれないと言った具合に、宿儺は口を裂いて弧を描いた。顔と顔は距離にして僅か数センチ。いつの間にか掴まれていた腕がミシミシと鳴るものだから、私はもう全てを諦めて固く目を瞑った。
伏黒君がどんな任務の前でも遺書は書いとけって言ってた理由が今わかったな。馬鹿にしてごめんね伏黒君。死んだら枕元に出てあげる。
「…………?」
数秒。数十秒。
とにかく力を込めた目元の筋肉が痺れ出した頃になっても、痛みのようなものは何も感じなかった。
恐る恐る目を開けば、目の前を塞いでいた男の影が消えている。
宿儺は特に私に何をするでもなく、またいつものように山の上でふんぞり返っていたのだ。
「はっ、弱すぎて虐め甲斐もないわ。」
「……弱いって、」
「誰が喋っていいと言った。」
「……っ、」
助かったと思えば精神的に傷を抉られる。
そりゃあ確かに貴方に比べれば弱いでしょうけど、同い年の中ではそれなりに頑張ってる方なんだよ?私は。
何も言い返すことも出来ぬまま奥歯を鳴らせば、宿儺は遂にふい、と目を逸らして私に一切の興味を無くした。
そしてくわ、と大きな欠伸。呪いの王も眠気とかあるのだろうか。
「……。」
…………。
……いや、でも、まあ。
何もされてない今だから言えるのだろうけど、宿儺は想像よりかずっと大人しい。
目が合えば鏖殺待ったなしかと思えばそうでは無いらしいし、言葉が通じる分多少の交渉には乗ってくれる。
そして、何より。
「──許可なく見上げるな、小娘。」
「くぅ……!!」
かっこいい。只管にかっこいい。お願いだから
「だらしない顔をするな、不愉快だ。」
「いや、これには深い事情が、」
「喋るなと言ったはずだが?」
「だー!もーー!やってられん!!」
口から生まれたと言っても過言ではない私にとって喋るなと言うのは何よりも辛い。しかも推しの前で。
溜まった鬱憤を晴らすべく足元に転がっていた骨を宿儺に投げつけた。
まあ結果は言うまでもなく、当たらず。またもや瞬きの内に目の前に現れた宿儺。
なんかこれすごい既視感。
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梅鉢朝桜 - 宿儺様ぁ…(泣) 愛してます、もう本当に…。素敵な作品をありがとうございます!!! (2023年4月26日 23時) (レス) @page43 id: 5a6192c453 (このIDを非表示/違反報告)
レナート(プロフ) - 好き……泣きました。。最高過ぎます…。こんな素晴らしい神作をありがとうございます…。 (2022年3月31日 2時) (レス) @page43 id: 3e48fe4f1f (このIDを非表示/違反報告)
ゆいゆい - なんか原作で泣いたことないのに二次創作で泣くのなんで?特に宿儺と夢主ちゃんが最後話していたところが感動しました!応援しています! (2021年8月10日 14時) (レス) id: de4752e106 (このIDを非表示/違反報告)
好きです大好きです - えっ、何でしょうもうなんか凄かったです(;;)色んな夢小説を拝見していましたが、こんな素晴らしい作品初めて会いました!!本当に素晴らしい作品だと思います、読んでいるうちに情景がすんなり頭に思い浮かんじゃいますよ!お2人が幸せになることを祈ってます(^^♪ (2021年7月23日 17時) (レス) id: fdb8e911e1 (このIDを非表示/違反報告)
睡眠時間 - 途中で全てに気づいた瞬間、グッと溢れ出てきた感動、それと同時に作者様の素晴らしさを目の当たりにした。まるで、全てを見透かされていたかのような、先回りされた感じ。←ポエマーしてみました 一言言うと、最高でした大好きですありがとうございました!!!! (2021年4月20日 0時) (レス) id: ee5607c705 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ゆき | 作成日時:2021年2月9日 22時