赤い宝石Ⅱ〈×ym〉 (ページ3)

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素直 ktym ページ3

※けとやまです

圭人がJUMPを抜けてからは1度も連絡をしていない。

別に仲が悪くなったとか、そういうのじゃない。

ただ、ちょっと気まずいだけ。

それに俺から連絡するとか俺が求めてるみたいで嫌だ。

圭人が日本にいた時は毎日のように連絡を取リ合っていたし、オフの日が重なれば必ずと言っていい程会っていた。

もうそんな日常も訪れないのかな、と思うと鼻の奥がツンとなる気がした。

己のプライドで自分自身を傷つけている。

早く連絡すればいいのに。

なんて自分で思うのに手は動かない。

なのに、｢やまちゃん｣って優しく呼ぶ声を求めている。

こんなの俺らしくない。

｢連絡ぐらいしろよ…｣

鳴る気配のない携帯を握りしめて呟く。

真っ黒な液晶画面に雫が落ちて、自分が泣いていることに気付いた。

やっぱり俺らしくない。

携帯をソファに放り投げ顔を洗おうと洗面所に行く。

鏡にうつる俺は、目を真っ赤にして頬を濡らしている。

｢…けいと｣

自分でも驚くようなひどく甘ったるい声が出て慌てて冷水で顔を洗いタオルでゴシゴシと強く顔を拭く。
きっと圭人がいたら｢そんなに擦ったら傷ついちゃうよ｣って言うんだろうな。

ﾌﾞﾌﾞｯ
｢！？｣

リビングに戻り冷蔵庫を物色していれば携帯のバイブ音が聞こえ急いでソファに駆け寄り携帯を見る。

｢なんだ…｣

圭人かも。という淡い期待は叶わず、マネージャーからだった。

『明日オフになったから久しぶりにゆっくり休んで』

明日か…。

知念空いてるかな。あ、仕事あるって言ってたっけ。
他のみんなもあるって言ってたな。

ゲームでもするか。

いつもならオフが待ち遠しいのに、今は仕事だけしていたい。

ﾌﾞﾌﾞｯ

また震える携帯に目を向ければ "圭人" というあんなにも待ち望んでいた文字。

｢え…｣

通知をタップしてメッセージ画面を開く手は小刻みに震えている。

『やまちゃん久しぶり。明日会えるかな？』

『会えるよ』

滲む視界の中震える手で送信ボタンを押せば直ぐに既読がついた。

『ならやまちゃんの家行くね。もしかして引っ越したりした？』

『引っ越してないよ。分かった』

"待ってるね" という文字は打たなかった。
正確に言えば打てなかった。

打とうとしたけど、打ちたかったけど、俺のプライドが許さなかった。

｢素直に言えばいいのに｣

いつかの知念に言われた言葉。

ねぇ知念、素直ってどうやればいいの。