僕の天使 -七色の空-

大切な人 ページ38

ハッとするA。

ゆっくり顔を上げるドンヘの腕が抱き寄せているAの姿を見て、サキは少しだけ顔を曇らせる。


ドンヘは腕を離すと嬉しそうに笑った。

DH「ユイ。」


サキはユイを下ろす。

サキの服を掴んで少し怯えた顔をしていた。


Aはベッドから立ち上がると数歩後ずさる。


DH「おいで。ユイ。」

ドンヘが両手を伸ばすと、ユイはサキを見上げた。

サキは笑顔で頷く。


ゆっくりゆっくりベッドに近づくと、ドンヘはユイを抱きあげてベッドに座らせた。

DH「良かった…無事で…。」

ﾕｲ「ドンヘ…いきてる…？」

DH「ん？生きてるよ？お化けに見える？」


首を横に振る。


ﾕｲ「ごめんなさい…ユイがとびだしたから…。」

DH「ユイ…。」


大きな瞳が涙をポロポロと落とした。

小さな手で何度拭っても、止まらない涙にドンヘは微笑む。


DH「ユイ、俺はもうすっかり元気。ほら、元気そうだろ？」

ﾕｲ「うん……。」

DH「だから泣かないで。ね？」

ﾕｲ「ユイ…ドンヘがしぬのいやだ…。」

DH「大丈夫。死なないから。絶対。」

ﾕｲ「ぜったい…？」

DH「約束。」


笑顔で小指を差しだす。

ユイは鼻をすすって涙を拭うとドンヘの小指に小さな小指を絡めた。


サキはAに小さく会釈してベッドに近づく。


DH「サキ…。」

ｻｷ「ドンヘ…。」


サキの顔も泣きだしてしまいそうに歪んでいた。


DH「ごめん…心配かけて…。」

ドンヘはサキの手をそっと握る。

サキは何度も首を横に振った。


ｻｷ「ありがとう…ユイを守ってくれて…。」

DH「そんな事はいいんだ…。ユイが無事で良かった…。」


軽く引いた手。

サキの頭を抱き寄せる。


DH「もう泣くな…。俺は無事だった…生きてる…。な？」

何度も頷く。


ドンヘはサキに大丈夫だと何度も言った。

その光景を見ていたAは目を伏せる。


どんなに…

心が震えるような言葉を貰っても…

どんなに…

私が王子様を好きになっても…


大切な人には勝てない…


EH「ね、みんなでお祝いしない。ユイちゃん誕生日散々だったろ？」

DH「いいね！」

EH「俺今からケーキ買ってくるよ。」

ｻｷ「で…でも…。病院だし…。」

EH「気にしない気にしない！ね、Aも一緒に……ど…う…？」


振り返るウニョク。

さっきまで確かにいたはずのA。


EH「あれ…？」


その姿はもうどこにも無かった。

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