S.tiger【病系短編集】11

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部屋の時計の、カチカチという音。


その音をかき消すくらい、ガタガタと音を立てて海斗の車いすがきしむ。時々混ざる海斗の口から息がもれる音が、俺の胸を締め付けた。



閑「怖いよな、海斗。あと少し、がんばれ…。」



俺にはわかるんだ、どんなにうつろな表情でも。海斗が怖がってるってことが。



閑「…なんで、海斗がこんな思いっ、」


けいれんが続く海斗の真っ白な顔を見守りながら、俺はぐっと唇をかみしめた。







閑「……2分30秒、」


海斗の発作がようやく落ち着いて、ほっと胸をなでおろす。ちょうど玄関のドアが開いて、海斗のお母さんが帰ってくる気配がした。



閑「おばさん、さっき海斗が発作起こしちゃって…。」

「ほんと！？……今は？」

閑「治まりました、2分半です。」


そう、とつぶやいて、海斗のお母さんが小さく息を吐く。いくら経験しても、きっと海斗のお母さんも怖いんだ。


「閑也くん、本当にごめんね。今日はもう、帰っていいよ？」

閑「え、でも…」


海斗の方を見ると、穏やかな寝息を立てて眠っていた。きっと疲れてしまったんだろう。



閑「…もう少しだけ、ここにいてもいいですか？今はなんか、離れたくなくて。」

「そっか。……閑也くんいてくれたら、海斗も安心するわ。」


そう言って少しだけ口角を上げると、海斗のお母さんは部屋から出ていった。





2人きりになった部屋で、海斗の細い寝息だけが響く。長いまつげが白い顔に影を落としていて、見とれるくらいにきれいな寝顔だ。



閑「海斗、よく頑張ったね。」


赤ちゃんみたいな顔で眠る海斗の頭を、そっとなでる。しばらくそうしていると、海斗の目がゆっくりと開いた。

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