S.tiger【病系短編集】11

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Side元太


海「…っゲホゲホ、」

元「おお、大丈夫？」


一気にしゃべりすぎたのか、海人が急にむせ返る。笑いながら水の入ったグラスを渡すと、海人は不思議そうに首をかしげた。


海「…あに、わらってん、お？」

元「え？いや、嬉しいなーって思って。」


海人はぱちぱちまばたきをした後、キモ、とつぶやいて水をあおった。キモくて結構。だって、本当に嬉しいんだもん。




海人は、昔はこんなにしゃべるやつじゃなかった。自分の話し方を一番恥ずかしいと思っているのは、他の誰でもなく海人自身だったから。


体も心も弱くて、体型通りもやしみたいな男だった海人。それでも、高校に上がるころには随分メンタルも強くなった。




最高だよ、海人。こっちをチラチラ見て、「キモイ」とか「しゃべり方変じゃね？」とかほざいてるやつらより、今のお前は何億倍もかっこいい。



そもそも、どいつもこいつもわかってないんだ。海人のいい所は、モデルみたいな体型でも顔でもない………いや、それも十分いいけれど。


自分をしっかり持ってるところとか、イケメンが台無しなくらいうるさい笑い声とか。舌足らずで「けんた」になっちゃうけど、ちゃんと俺の名前の発音を練習してくれるところとか…。



元「…ちゃんと、わかってんのかねえ。」


海人のいい所は、俺が知ってるだけでも本当にたくさんある。見た目だけで好きになってんなら、甘いよ。ガチで甘い。




元「海人、これ一つちょーだい。」


海人の紙袋から、ひときわ包装の派手なチョコを取り出す。俺は海人の返事も待たずに、それを口に放り込んだ。



元「…甘ぁ、」


口いっぱいに広がった甘みを、カフェオレで喉の方に逃がす。ギャーギャー騒ぐ海人の声を聞きながら、俺はペラペラの包装紙を手の中で丸めた。














「チョコよりあまい」fin.

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