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松倉さんや七五三掛先生に支えられながら治療に励むも、元太の状態はなかなか安定しなかった。
調子のいい日と悪い日の繰り返しで、今日は圧倒的に後者の日だ。
元「っうぅ、ゲッホゲホっ…」
時折苦しそうにせき込む元太の鼻の下には、酸素を送るチューブが通っている。背中をさすってやると、その目にじんわりと涙が浮かんだ。
元「も、やだ…。おうち、かえりたいよっ…。」
ポロっと大粒の涙がこぼれ落ちると、元太はせきを切ったように涙を流し始めた。ひくひくとしゃくりあげる声が、病室に響く。
龍「げんちゃん、大丈夫だよ〜。先生とゆっくり深呼吸してみようね。」
いつの間に来ていたのか、焦る俺の横をすり抜けて七五三掛先生が元太のそばに駆け寄る。先生は少しだけ俺の方を振り向くと、優しく笑った。
龍「お父さん、今日はお仕事お休みですか?」
如「は、はい。今日はずっと元太のそばにいてやりたくて…。」
龍「そうですか。…げんちゃん、よかったね〜。パパ、今日はずっと一緒にいてくれるって。」
元太に向けられた先生の明るい声に、俺は思わずうつむいてしまう。
よかったって、何が?俺は、泣きじゃくる元太を元気づけてやれるすべも知らないっていうのに。
膝の上に置いた手を、ギュッと握りしめる。すると、後ろから優しく肩をたたかれた。
如「松倉さん…、」
倉「お父さん、これ最近発見した魔法の絵本です。これ読んであげると、元太泣き止みますよ。」
いつも通りのまぶしい笑顔を浮かべて、松倉さんが絵本を差し出してくる。それを受け取って表紙を見た瞬間、心臓がどきんと跳ねた。
―パパ、おかえり。
絵本から顔を上げて、君が言う。隣には寝ている元太。また途中で寝ちゃった、何て言いながら、君は元太の髪を愛おしそうになでていたっけ。
倉「…えっ、川島さん!?」
驚いたような松倉さんの声に顔を上げた瞬間、熱いものが頬を伝う。
青空と、鮮やかな虹が描かれた表紙。悲しいほど記憶に焼き付いたその絵に、ポツリと雫が落ちた。
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おさと(プロフ) - る - るさん» る-る様、リクエストありがとうございます!またリクエストいただけたこと、いつもお読みいただけていること、本当に嬉しいです😭長くお待たせしてしまうかもしれませんが、しっかり書かせていただきます、! (2022年8月27日 17時) (レス) id: ede36f8a86 (このIDを非表示/違反報告)
おさと(プロフ) - そらさん» そら様、コメントありがとうございます!またリクエストをいただけるなんて、本当に嬉しいです😭続編、書かせていただけるのが今から楽しみです!またまたお待たせしてしまいますが、気長にお待ちいただけますと幸いに存じます! (2022年8月27日 17時) (レス) id: ede36f8a86 (このIDを非表示/違反報告)
る - る(プロフ) - いつも本当に楽しく読ませて頂いています; ; リクエストなのですが、リアル設定で松倉くんが仕事に疲れ塞ぎ込んでしまっていってしまい段々と仕事にも来なくなりそこで全メンバーが松倉君を助けるお話が読みたいです。分かりにくくて申し訳ないです.... (2022年8月27日 13時) (レス) id: 6d6ceb074c (このIDを非表示/違反報告)
そら - →病気は悪くなるばかり。弱っていく青を見て桃は自信をなくす。そんな姿を見て白も昔を思い出し、桃だからできることがあると励ます。 (2022年8月25日 20時) (レス) id: e020254286 (このIDを非表示/違反報告)
そら - たくさんリクエストある中恐縮ですが、またまたリクエストさせていただいてもよろしいですか。「夢のかたち」の続編で、研修医の桃さんが大きな病気と闘う青の担当に。頑張る青の姿を子どもの頃の自分と重ねてなんとか治してあげたいと奮闘するけど→ (2022年8月25日 20時) (レス) id: e020254286 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:おさと | 作成日時:2022年8月10日 19時