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元「っパパぁ…、」
如「元太、遅くなってごめんな。」
ケホケホ、と乾いた咳で体を揺らしながら、元太が点滴のつながった手を伸ばしてくる。俺は家から持ってきた荷物を床において、ぐったりと病室のベッドに体を預けている元太を抱きしめた。
空咳はしているけれど、怪しげな呼吸音は聞こえない。そのことに少しだけ安心しつつ元太の背中をなでていると、後ろから「あ、」と小さな声が聞こえた。
「元太くんのお父さんですよね?おかえりなさい。」
如「あ、はい…。遅くなってしまって、申し訳ありません。」
「全然、遅くなんかないですよ。」
大きくて、きらきらした目。一見して若手の看護師さんだとわかるその人は、俺に明るい笑顔を向けると、そのまま元太に視線を移した。
「元太、いい子にして待ってたもんな?」
元「うんっ、僕、海斗といい子にしてた!」
「海斗」と呼ばれた看護師さんは、うんうん、と頷きながらさりげなく元太の背中をさすった。元太もされるがまま、にこにこしながら看護師さんの方を見ている。かなり懐いているようだ。
俺は、こっそり看護師さんのネームプレートを見た。
如「…松倉さん、とおっしゃるんですね。元太の父の、川島如恵留です。息子がお世話になります。」
倉「あっ、はい!松倉海斗です!こちらこそ、よろしくお願いします!」
自己紹介を忘れていたことに焦っているのか、松倉さんが慌てた様子で頭を下げる。でも、あわあわしていたのはほんの数秒だけだった。
倉「…川島さん。微力ですが、僕も頑張ります。元太くんが、早く学校に戻れるように。」
松倉さんの引き締まった表情に、今度はこっちがはっとさせられる。
元太の状況をよく理解したうえで寄り添ってくれていることが、その表情と言葉だけで十分すぎるほど伝わってきた。
元「ぼくも、がんばる!」
松倉さんの言葉に勇気づけられたのか、元太が右手を元気よく上げる。それに笑顔で応える松倉さんの横顔を見ながら、俺もひそかに励まされているような気分になっていた。
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おさと(プロフ) - る - るさん» る-る様、リクエストありがとうございます!またリクエストいただけたこと、いつもお読みいただけていること、本当に嬉しいです😭長くお待たせしてしまうかもしれませんが、しっかり書かせていただきます、! (2022年8月27日 17時) (レス) id: ede36f8a86 (このIDを非表示/違反報告)
おさと(プロフ) - そらさん» そら様、コメントありがとうございます!またリクエストをいただけるなんて、本当に嬉しいです😭続編、書かせていただけるのが今から楽しみです!またまたお待たせしてしまいますが、気長にお待ちいただけますと幸いに存じます! (2022年8月27日 17時) (レス) id: ede36f8a86 (このIDを非表示/違反報告)
る - る(プロフ) - いつも本当に楽しく読ませて頂いています; ; リクエストなのですが、リアル設定で松倉くんが仕事に疲れ塞ぎ込んでしまっていってしまい段々と仕事にも来なくなりそこで全メンバーが松倉君を助けるお話が読みたいです。分かりにくくて申し訳ないです.... (2022年8月27日 13時) (レス) id: 6d6ceb074c (このIDを非表示/違反報告)
そら - →病気は悪くなるばかり。弱っていく青を見て桃は自信をなくす。そんな姿を見て白も昔を思い出し、桃だからできることがあると励ます。 (2022年8月25日 20時) (レス) id: e020254286 (このIDを非表示/違反報告)
そら - たくさんリクエストある中恐縮ですが、またまたリクエストさせていただいてもよろしいですか。「夢のかたち」の続編で、研修医の桃さんが大きな病気と闘う青の担当に。頑張る青の姿を子どもの頃の自分と重ねてなんとか治してあげたいと奮闘するけど→ (2022年8月25日 20時) (レス) id: e020254286 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:おさと | 作成日時:2022年8月10日 19時