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小学校の保健室に行くと、熱で弱った元太は泣きながら俺に抱き着いてきた。
ゼエゼエと苦しげな呼吸音に、血の気の引いた顔。一瞬で異常を感じ取った俺は、そのまま真っすぐ元太を病院に連れていった。
「…正直、状態はあまりよくないですね。入院の必要があります。」
元太を担当してくれている七五三掛先生が、重苦しい声で言う。一番聞きたくなかった台詞に、俺は思わず目を伏せた。
如「やっと友達に会えるって、学校楽しみにしてたんですよ、?」
龍「……申し訳ありません。」
先生の沈痛な面持ちに、はっと我に返る。必死に元太を治療してくれている若い先生を責めるようなことを言って、俺は何をしているんだ。
如「っすみません。あの、私、息子の荷物を取ってきますので…、」
龍「いったんご帰宅ですね?大丈夫です、元太くんはこちらでお預かりします。」
朗らかな表情で頷いた先生に頭を下げて、病院を出る。なんとなく頭がフワフワするのを感じながら、俺は家に戻った。
如「えっと……」
静かな家の中を見回して、無駄に足踏みをする。一度元太の入院準備を経験しているはずなのに、まだ持ち物に悩んでしまう自分はなんて情けない父親なんだろう。
いつまでもこうしているわけにはいかないと思った俺は、意を決して1冊のノートを手に取った。
亡くなった妻が、生前元太の体調を記録していたノート。入院の記録もあるから、これを見れば持ち物のこともわかるかもしれない。
震える手で淡い水色の表紙を開く。でも、その手はページを1つめくっただけで限界を迎えてしまった。
如「っ…!」
見慣れた丸みのある文字を目にしただけで、叫び出したいほどの愛おしさがこみ上げる。俺は気持ちを抑えられなくなって、手の中のノートを閉じた。
元太、弱い父親でごめん。俺が強くいなきゃ、お前を守らなきゃいけないのに。それなのに、まだママを思って、ママに会いたくて泣いてるなんて。
如「…最低、だよなぁ。」
見上げた天井が、水面のように揺らめく。迷子の子供のように、俺は声を放って泣いた。
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おさと(プロフ) - る - るさん» る-る様、リクエストありがとうございます!またリクエストいただけたこと、いつもお読みいただけていること、本当に嬉しいです😭長くお待たせしてしまうかもしれませんが、しっかり書かせていただきます、! (2022年8月27日 17時) (レス) id: ede36f8a86 (このIDを非表示/違反報告)
おさと(プロフ) - そらさん» そら様、コメントありがとうございます!またリクエストをいただけるなんて、本当に嬉しいです😭続編、書かせていただけるのが今から楽しみです!またまたお待たせしてしまいますが、気長にお待ちいただけますと幸いに存じます! (2022年8月27日 17時) (レス) id: ede36f8a86 (このIDを非表示/違反報告)
る - る(プロフ) - いつも本当に楽しく読ませて頂いています; ; リクエストなのですが、リアル設定で松倉くんが仕事に疲れ塞ぎ込んでしまっていってしまい段々と仕事にも来なくなりそこで全メンバーが松倉君を助けるお話が読みたいです。分かりにくくて申し訳ないです.... (2022年8月27日 13時) (レス) id: 6d6ceb074c (このIDを非表示/違反報告)
そら - →病気は悪くなるばかり。弱っていく青を見て桃は自信をなくす。そんな姿を見て白も昔を思い出し、桃だからできることがあると励ます。 (2022年8月25日 20時) (レス) id: e020254286 (このIDを非表示/違反報告)
そら - たくさんリクエストある中恐縮ですが、またまたリクエストさせていただいてもよろしいですか。「夢のかたち」の続編で、研修医の桃さんが大きな病気と闘う青の担当に。頑張る青の姿を子どもの頃の自分と重ねてなんとか治してあげたいと奮闘するけど→ (2022年8月25日 20時) (レス) id: e020254286 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:おさと | 作成日時:2022年8月10日 19時