S.tiger【病系短編集】11

●思い出を抱きしめて（青×白） ページ14

げんた×のえる

・らら様リクエスト

・notリアル設定(父：如恵留、息子：元太)

・今回のお話は、全て如恵留さん視点で進みます。






如「元太、そろそろごちそうさましよう？学校遅れちゃう。」


んー、と曖昧な返事をしながら、息子の元太はもそもそと朝ご飯を食べ続けている。




小学校に入って2回目の夏休みが終わって、今日から２学期。忘れ物がないか心配になって、俺は元太のランドセルに手を伸ばした。



元「パパー、」

如「ん？」

元「雑巾ちょーだい。」

如「へっ？雑巾？」

元「うん、先生が持ってきてって。」


こともなげに言うと、元太がパンの残りにかぶりつく。新学期に雑巾を持っていく習慣は、たしかに俺が小学生の頃もあった。まさか、今も健在だったとは。



如「元太―、そういうことは早く言ってくれなきゃ…。」

元「だって、ママはいつもちゃんと準備してくれるもん。」



ママ。


元太が発した言葉に、胸がチクリと痛む。その痛みをごまかすように、俺は小さく息を吐いた。



如「…パパ、雑巾買ってくるから。食べ終わったら、お薬飲んで待ってて。」


はーい、と元太の返事を背中で聞きながら、車のキーを手に取る。俺は、キーの隣にある写真立てに目を向けた。




四角いフレームの中でほほ笑む、若い女性。２か月前、交通事故で亡くなってしまった妻の写真だ。


明るくて、いつも笑顔だった妻。初めての子育てに苦戦する俺を見て、笑っているだろうか。それとも、今まで子育てを任せきりにしていたせいだと、頬を膨らませているだろうか。



問いかけるようにフレームをなでても、答えは返ってこない。


行ってきます、と小声でつぶやいて、俺は写真立てから手を離した。

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