22話 ページ26
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S side
｢…翔くん、帰れるか？｣
｢うん、もう大丈夫…。｣
気付いたら智くんが目の前にいて、思い切り抱き締められていた。
今までにも何度か抱き合う事はあったけど、こんなに強く抱きしめられる事はなかったから、胸がちくっと痛んだ。
どうしよう…俺、この人のこと本当に好きなんだ…。
本当はこのまま、思い切り抱き締め返したかった。好きだ、大好きだって、目の前にいる貴方に直接伝えたかった。
…でも、頭に掠めるのはまさきとかずとじゅん。
｢…ねえ、智くん。｣
｢何だよ、腹痛えの？｣
きっと智くんは、俺の考えてることわかってる。だからそんなに、切なそうな笑顔を見せるんだ…。
好きだ。好きだよ、智くん…。言葉には出しちゃいけないのはわかってるけど、どうしても言ってしまいたい。
｢あのさ、翔くん。｣
｢ん…？｣
｢煩わしいこと1回取っぱらってさ、好きだって言ってくんねえ？そしたら俺…ちゃんと家族に戻るから｣
少しずつ少しずつ、言葉を紡いでいく智くん。俺が好きだって言ったら、智くんは本当に俺を諦めてしまう？
そんなの嫌だって言う俺と、それが俺の正しい道だって言う俺が脳内で争ってる。
煩わしいこととか難しいこと取っぱらって貴方に想いを伝えても許されるのだとしたら、俺は…。
｢智くん…俺、智くんのことが好き…だから、諦めないで…。｣
｢翔くん…？｣
｢俺は、智くんが欲しい…っ｣
言い終わると同時に重なる唇。
ごめんな、まさき、かず、じゅん…。今だけ、ダメなお兄ちゃんになるけど、許してくれっかな…。
俺はどうしても、この温もりが手放せないんだ…。
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作者名：おうす | 作成日時：2017年6月7日 20時
