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しん、と静まり返る楽屋。
本番まで時間がない…。
折れるしかないのか…。
そう思い、口を開こうとした時、
「よし！」
今までずっと黙ったままだった手越が、突然声を発した。
手越はイヤホンで何かを聞いていた。
おいおい、この状況で何を聞いてんだよ。
3人の呆れた顔なんて気にもせず、手越は言う。
「トークは俺ら3人で回すとして、歌は、まっすーオクターブ下歌って。」
「…え？」
「っちょ、手越！まっすーは歌えないって…！」
「まっすー。今出ないのはGより上だよね？」
「ぇ、…うん…。」
小山に被せるように手越は続ける。
G、それはドイツ音名のこと。
ドレミで言うとソの音だ。
さっきのリハーサルで出にくかったのは、確かにGより上の音だった。
俺だけしか気づいていないと思っていたが、
まさか、あの短い時間でそこまで分かったっていうのか…？
「それより下なら歌える？」
「……たぶん、」
「ちょ、手越！」
シゲもどんどん進む話を止めようとする。
でも、そんなのこいつは御構い無しだ。
「原キーのまっすーのパートは俺が歌う。
まっすーはここと、ここをオクターブ下で歌って。
それで、Bメロのところは三度下でハモって。
それならGより下になるはず。」
イヤホンを外し、音楽を流しながら、手越は流れるように指示を出す。
呆気にとられる俺たち。
でも、それと同時に分かったことがある。
ひとつ、
さっきまでこいつが聞いていたのは、これから歌う俺たちの曲だったということに。
ふたつ、
楽屋に戻るなり、こいつはすぐ俺のパートを覚えようとしていたんだということに。
みっつ、
その代わり、どこなら俺が歌えるか。
どうしたら俺も歌えるか。
それを考えていたということに。
ひと通り説明を終えると、
3人の目を見て、ハッキリと手越は告げる。
「歌うよ。」
それはまるで、幼い頃に立てた作戦を実行する時のような、
失敗なんて微塵も考えていないような、
そんな自信に満ちた目で、手越は告げる。
「生の歌を、届けるよ。」
ああ、本当にこいつは…。
俺たちの悩みや葛藤なんてすぐに吹き飛ばしてしまうんだ。
…
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さく(プロフ) - はさみのりさん» これからも応援してます！素敵なお話ありがとうございました。 (2018年8月1日 1時) (
レス) id: f81c7981b1 (このIDを非表示/違反報告)
きみえ(プロフ) - はさみのりさん» これからも素晴らしいお話待ってます！ (2018年7月29日 17時) (レス) id: 07ca606d01 (このIDを非表示/違反報告)
はさみのり(プロフ) - さくさん» 返信がおそくなってしまい、すみません(><) とても嬉しいお言葉ありがとうございます！これからもどうぞよろしくお願い致します。 (2018年7月29日 6時) (レス) id: 7684741bb3 (このIDを非表示/違反報告)
はさみのり(プロフ) - きみえさん» 返信が遅くなってしまい、すみません(><) はじめてだなんて光栄です…！こちらこそご覧いただきありがとうございました！ (2018年7月29日 6時) (レス) id: 7684741bb3 (このIDを非表示/違反報告)
さく(プロフ) - こんなに泣いたのは数年ぶりくらいというくらい、とにかく涙が溢れました。本当に感動しました！大好きなテゴマスの歌、声についてという重めな話題なのに、最後は幸せな気分になれました。素敵なお話をありがとうございました。 (2018年7月21日 9時) (レス) id: b4952ba7f1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：はさみのり | 作成日時：2018年6月5日 14時
