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【NOside】
背後からゾクッとする気配と同時に知っているはずの声が聞こえ、一瞬困惑するAは足を止めて短刀を握る手に力を込めた。
「そんなに身構えなくていい。危害を加える気はない。少し君に話があるだけさ」
柔らかい話し方も似ている…でもそんな筈は…
Aは深呼吸をし、ゆっくりと振り返った。
「やあ、A。久しぶりだね」
そこにはAの想像通り、艶のある長い黒髪をハーフアップにし、袈裟を着た男が人の良さそうな笑みを浮かべて立っている。
夏油傑───五条悟の親友であり、彼と同じ特級術師であった男。思想の違いから離反し、非術師を鏖殺し、呪術師だけの世界を作るという理想掲げていた。しかし、昨年の12月に野望を果たせないまま五条悟によって手に裁かれた。
A「……あなたは誰ですか?」
夏油「私のことを忘れてしまったのかい?寂しいな」
眉を下げて残念そうに微笑む彼をAはキッと睨む。
A「あなたは夏油さんじゃない。あなたからは違う気配がする」
夏油「気配…気配ねぇ。根拠が薄すぎやしないかい?」
A「夏油さんはもういないはずです。悟はあの日、夏油さんを…」
そこまで言いかけて口を噤んだ。
事実ではあるが、殺したとハッキリ口にするのは少し抵抗を覚えてしまう。
夏油「やれやれ。まあいいか。私は話が出来ればそれでいい」
朗らかな笑顔に戻った夏油は腕を組み、一歩前に出た。
Aは反射的に半歩下がる。
A「あなたと話すことはありません」
夏油「そう冷たくあしらわないでくれ。君には我々の仲間になってもらいたい」
A「仲間…?」
眉を顰めて怪訝な顔で夏油を見る。
夏油「君は面白い力を持っているね。身体能力を強化する術式、それから呪霊の言葉が解る術式。後者は特に珍しい」
A「…ちょっと待って」
彼の言うことにAは驚いて目を見開く。
Aの術式に関しては五条が信用したほんの数人しか知らない。
ましてや呪霊の言葉が解る術式に関して知っているのは五条と七海だけ。
もちろん夏油が知れる機会など無かったはずだ。
A「なぜあなたが、それを…」
夏油「少しは私と話す気になってくれたかな」
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更紗和金(プロフ) - マリオットさん» 一気みしてくださったとは…とても嬉しいです。こちらこそこんな自己満足作品を読んでいただきありがとうございます! (2022年10月2日 18時) (レス) id: b1ab373c3f (このIDを非表示/違反報告)
マリオット - 一気みしました!!すごいです!この小説書いてくれてありがとうございます!! (2022年10月1日 11時) (レス) @page3 id: 4a1e7dbbbb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:更紗和金 | 作成日時:2022年9月25日 18時