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【Aside】
悟が目隠しを外して、真っ直ぐ私を見る。
その蒼い瞳で見つめられたら、私は抵抗なんて出来なくて…
無理やり止めた涙がボロボロと溢れ出た。
A「……悟……私…っ」
五条「ごめん、ゆっくりでいいよ。泣きたいだけ泣いていいから」
悟に抱き締められたまま、私は静かに泣く。
頭を撫でたり、背中を擦ったりしてくれて、悟の温もりと優しさが嬉しくて…
悲しみと嬉しさが入り混じった涙を私は流し続けた。
少しして落ち着いてきた私は悟に謝り、もう大丈夫だと伝える。
悟と身体を離した私はスンスンと鼻を啜りながら涙を拭う。
五条「あんまり擦っちゃダメだよ。今度ヒリヒリしちゃうから」
A「…うん…」
私の手を止めた悟はタオルを濡らして持ってきてくれた。
五条「一旦座ろっか」
促されてソファに腰を下ろし、濡れタオルを目に当てる。
ひんやりと冷たくて気持ちが良い。
A「悟…私、ずっと考えてた」
五条「うん」
悟がギュッと手を握ってくれる。
タオルを外して視線は下に向けたままぽつりぽつりと話す。
A「訳も分からずに猫になっちゃう呪いにかかって、解呪されたらそのまま呪術師になって…でもその傍らで両親のことをずっと考えてたの…」
濡れタオルを握る手に力が入った。
A「連絡取ってなかったから、きっと両親は何も知らないから、行方不明扱いになってるんじゃないかって…だから何があったのか全部正直に話そうと思って帰ろうとした…」
五条「うん」
A「でも…っ…家がどこにもなくて……電話もね、かけてみたの…でも繋がらなくて…」
また涙が出てきて、ポタポタと自分の手に落ちる。
A「おばあちゃんの家もなくて、近所の人に“檜野”なんて苗字知らないって…」
悟が空いている片手で背中を擦ってくれた。
縋るように悟に握られた手に力が入る。
A「街並みは、変わらないのに…私の家だけが…無くなってて…私だけ、世界から切り離されたみたいで…」
寂しい…寂しいよ…
A「帰る場所…無くなっちゃった…」
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更紗和金(プロフ) - マリオットさん» 一気みしてくださったとは…とても嬉しいです。こちらこそこんな自己満足作品を読んでいただきありがとうございます! (2022年10月2日 18時) (レス) id: b1ab373c3f (このIDを非表示/違反報告)
マリオット - 一気みしました!!すごいです!この小説書いてくれてありがとうございます!! (2022年10月1日 11時) (レス) @page3 id: 4a1e7dbbbb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:更紗和金 | 作成日時:2022年9月25日 18時