褒め言葉か〈モモハ〉 ページ10
簡潔に言って、非常に満足。おそらく今の俺の顔は、心なしか浮かれていることだろう。
官能小説をひとしきり楽しんだ後、俺が歩くのはほんのりと灯る繁華街だ。とはいえもう夜は深いから、人並みも大分なく、店も閉まっているのがほとんどだけれど。
この国は守るべきだ。だって、こんなにも素晴らしい書物や、麗しい女人が沢山生息しているのだから!
毎晩のことながらも、俺はそう思わざるを得ない。だって、凄いんだもんこれ。
____だもんとか言ってるが、これでも俺は17歳。あときちんと働いている。試験に出すからね此処。
「さて、今日はこのまま何処か遊郭にでも……いや、ちょっと出費が嵩むな。ああいうお高いのはタヌキのお偉いさん方おだてて、奢ってもらうのが得策だ」
「おい、稲荷」
またしても唐突に背後から聞こえた女人の声。咄嗟に振り返れば、其処には見慣れた顔が二つ。その蔑みの混じった表情と、よくわかって居なさそうな純朴な表情も込みの、見慣れた顔が二つ。
俺は軽く息を吐くと、目を細めて応じる。無論、本は懐の中だ。
「なんだい、隊長。椎名さん」
隊長は、たぶんタヌキんところの帰りだろうか。少しばかり苛立った跡が垣間見られる。顔に紅潮した跡が見られるのはそのせいだろう。まさか男関係だとは到底思えないグェッ。
と思った途端、鳩尾に一発拳を食らう。地面に膝を突きながら、拳の主__椎名さんへと問うた。
「え、今自分何もしてなくないかい?」
椎名さんは隊長と違い、俺が何をしていたのかを察しては居ないだろう。ただ、冷ややかな目でこちらを見やるばかりだ。
「お姉を侮辱してる気が、したから」
「そうか、ありがとうもう一回ィヴッ」
今度は隊長から俺の頭へ一撃。完全に地面に顔が埋まった。この窒息感がまた、普段は味わえない。この二人、実は存外いい女人達なのだ、たぶんね。
一方、俺をぶん殴った隊長は、ああ、と悔し気に口元を歪ませる。
「そうか、お前はこういうの、寧ろ喜んでしまうのか……くそ、変わった奴め」
「褒め言葉か。隊長方は優しいな、もっと言ってくれ」
この後、椎名さんから一発顎に向け、鋭い蹴りを貰えた。
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詩学音丸(プロフ) - 更新終わりましたー! (2018年10月10日 12時) (レス) id: b3b81574c1 (このIDを非表示/違反報告)
詩学音丸(プロフ) - 更新させて頂きます! (2018年10月10日 12時) (レス) id: b3b81574c1 (このIDを非表示/違反報告)
瑠飴 - 夜狐さん» 了解です! (2018年10月8日 20時) (レス) id: 015f09e847 (このIDを非表示/違反報告)
夜狐(プロフ) - 瑠飴さん» 大丈夫ですよー、以後気をつけてくださいねー (2018年10月7日 13時) (レス) id: dee1d215ab (このIDを非表示/違反報告)
瑠飴 - 夜狐さん» アッアッごめんなさい忘れてました() (2018年10月7日 13時) (レス) id: 015f09e847 (このIDを非表示/違反報告)
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