夜桜の散る中に…【小説Ver.】 (ページ3)

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桃色の軍人【モノノ】ページ3

桜が散るこの街で、軍服のスカートをひらひらと動かしている女の子が歩いていた。

胸には桜型のバッチをつけており、街の人々に一瞬で彼女が�軍人�であると分からせた。

「はあ……ヤダヤダ。街の警備って本当に暇よねえ。早く夜にならないかしら」

そう言いながら桃髪の彼女＿＿＿貴音梅小は、腰に巻いてある長い刀に触れ、鼻歌を口ずさんだ。
…ふと、梅小の足が止まる。何かを思い出したかのように、ピタリと。

「そういえば…！今日は璃音ちゃんのマフラーを巻いてあげるんだった！早く帰ろっと！」

今日は、よくマフラーを巻いててあげている愛してやまない可愛いい女の子の璃音ちゃんにマフラーを巻いてあげる日。

天気は晴れているのにもかかわらず、外は少し冷えているから、きっと璃音ちゃんはマフラーを巻いてもらいに来るだろう。

たしかに街の警備は軍人として大切だが、自分にとっては璃音ちゃんのマフラー巻きの方が大切だ。

梅小は軍靴の靴紐をきつく縛り上げる。

「早くマフラー巻きに行かなきゃ！！！」

梅小は川にかけられた橋を渡る。橋は赤いペイントでいたってシンプルだ。そんな見慣れた橋を駆け抜ける。

帰る道中で、街の観覧版に人が群がっているのが目に見えた。

何事かと思い人だからの方へ向かう。

「何があったの？」

「いや、この紙……」

「�災鬼は高貴なり�？何これ」

紙に書かれていたのは、自分たちの敵。災鬼。そんな災鬼のことを�高貴�と書いている。

きっと悪戯だ。そんな事を思う人がいるはずなんていない。災鬼は皆の敵なのだから。

「こんな紙、放っておきなさい。子供達のどうせ悪ふざけでしょう」

「でも……」

「心配でも、ウチら軍人がいるんだから」

心配そうにする村人を励ますように明るく笑う梅小。

その後、村人達は次第に家に帰って行き、梅小も帰ってマフラーを巻きに行こうと思ったその時。

「＿＿＿＿＿＿」

なぞの視線を感じ、ﾊﾟｯと後ろを振り返る。あたりには村人がいるだけで、怪しい動きをしているものはいない。

気のせいかと思い足を進めた梅小だったが、先ほどの紙切れや視線のことについて、隊長と話し合う必要がある。そう感じたのだった。

＿＿＿まだ梅小の脳内には、二つの不可解な事がよぎったままで。