〇≠無の証明Ⅳ－４ (ページ9)

今日:27 hit、昨日:11 hit、合計:578,145 hit

３ページ9

「つまり翔さん……まさか」
松本さんがメモを見下ろしてゴクリと生唾を飲み込んだ。

「この行方不明者、全員殺されてる可能性がある」
「……誰に？」
「虫が取り付いた人に、だな」

「でもそれおかしくない？」
大野さんがコピーと私が書いたメモなんかをざざっと見る。

「虫にそんな力あるならもっとたくさん死んでるはずじゃない？」
「だから、俺は一つの仮定をたてた」

櫻井さんが指を組んでみんなの顔を見渡した。

「工事が始まると虫が騒ぎ出す。ただ、虫も闇雲に誰彼構わず取り憑いてるとは思わない、何か共通点があるはずなんだよ」
「そうだね、もし誰彼構わずなら今頃旧館は死体の山だよ」
二宮さんがフフ、と笑った。
笑い事じゃない。

「ミラーくんたちは散々出入りしてたのに虫はつかなかった。その他の人たちもついた様子はない。河東と院長とAは虫が入った」
「男女、関係ないね」
相葉さんが言う。

「年齢も立場も違うね、なんだろう」
松本さんが首を傾げる。

「全然わかんねぇ」
櫻井さんが、あーもう！って考えるのをやめた。

「あのさ、Aはニノと俺には裏切ったな、って腹が立たなかったんだよね」
大野さんが言った。

「うん」
「じゃあ俺とニノの共通点は？」

「神様を背負ってる」
松本さんが平然と言った。

「虫は神を恐れない？」
「逆かも」

私の声に皆が反応した。

「逆って？」
「虫は、大野さんと二宮さんを敵に回したくなかった……？」
「ああ、なるほど。……虫は弁天様と閻魔様に喰われたくなかったのかな？」
櫻井さんが頷く。

「……俺の女神様喰わないよ、多分。大野さんについてる守護神が閻魔様なら、裁くけど喰わないよね？」
二宮さんが可愛く首を傾げた。

「……盗む人は盗まれることを異常に警戒する、放火魔は放火を心配する、つまり」

「喰うものは喰われることを恐れる」
私の言葉に繋ぐように、櫻井さんがボソリと言った。

「……実際、虫はニノに斬られたからスゲー嫌がってるだろうな多分」
松本さんがフフンと笑った。

「すごい勢いで逃げたもんね」
相葉さんも苦笑した。

「大野さんもなんかこう、手からビームみたいなので出せないの？こうやってさぁ！」
二宮さんが大野さんに、ねえねえ！って絡みに行ってる。

「こう？」
「そう、こう」
「かめはめ波？」
「かめはめ波でもいいからさぁ、なんか斬れないの？虫が俺から片付けちゃおうって思ったらどうすんの？ねえ？」