〇≠無の証明Ⅳ－４ (ページ8)

今日:10 hit、昨日:11 hit、合計:578,128 hit

２ページ8

「私に声は聞こえなかったけど、櫻井さんは聞こえてたんだよね『裏切ったな、許さない』って男の声」

みんなが私の顔を見た。
「……うん」
「私もね、櫻井さんが私を裏切った、って。誰も信用できないような気持ちになった」

「ニノは？くっついてたよな？」
櫻井さんが私に聞く。

「それがね、二宮さんと大野さんはそんな感じにならなかったんだよ」
「……なんで？」

大野さんと二宮さんが顔を見合わせてる。
「理由はわからない、けど、櫻井さんが許せなくて……次に松本さんと相葉さんもどうせ私を裏切るんだ、みたいな気持ちになった」
「それはホントに虫のせい？」

相葉さんが苦笑しながら聞く。

「だってね、私、私のこと信じないなら信じなくていいよ、あとで困ればいいんだわ、馬鹿めって性格なんだよ？」
「うん」
櫻井さんが私の言葉に少しかぶるくらいのスピードで頷く。おい。

「それなのに私を信じてくれない、とかいう程度で絶望的な気持ちになった。実際、夢の中の私は相葉さんを殺そうとしてた」

「翔ちゃんが『A！』って寝室に飛び込んでいったときの悪夢のことかな？」
「『助けて』って言ってるって言ってたよね」

相葉さんと二宮さんがそう言って、全員がニヤニヤしながら私たちを見る。
櫻井さんがだまーってズズズとコーヒーを啜ってる。

「あのまま虫を飼い続けたらどうなってたかなって……」
「もしかしたら殺してやりたいと思うかもしれない？」
大野さんが私にきいた。
やっと声聞いた。

「それくらい絶望的な気持ちになったよ」

「じゃあさ、例えばその虫が……他の人に取り憑いたらどうなる？」
松本さんがメモを見下ろして私に聞く。

「裏切ったら殺したいと思うだろうね」

私が言い切ったら櫻井さんが口を開く。

「院長の中からも虫の声がした」
「え」
「裏切り者って不倫相手に思ってる」

「え？不倫？」
二宮さんが小さく笑う。

「俺、すげー嫌な想像してる」
櫻井さんが指先でトントンとテーブルを叩く。

「虫は、Aに取り憑いて絶望的な気持ちにさせる力を持ってた」
「……」
「どちらかというとAは意図的に精神安定を図る努力をしてる奴だ、けど仮にこれが激情型の人間だったらどうなる？」
「……」
「喧嘩で済めばいいけど、もし自分のものにならないならお前を殺して俺も死ぬっていうタイプなら？」
「殺すと思う、そんな気分になったもの」

私の言葉に皆が目を見開いた。