崩壊(04/02) ページ27
平然としてる大野さんに慌てて声をかける。
「でも鎌持ってるよ！」
私の言葉に、は？って顔をした。
「鎌も霊でしょ」
「でも当たったらどうなるかわかんないよ！」
大野さんは平然としたまま、じっと宙を見た。
鎌の男の振り上げられた手が止まった。
固まった？
「この辺？」
大野さんが手のひらを広げて、気を放つ時のように腕を前に伸ばした。
突然鎌の男がひっくり返る。
「え！」
「大野さん……？」
「あ、そうだ！大野さん！閻魔様に声をかけて！ちょっと力貸してよ、っていうだけでいいから！」
櫻井さんがそう言った。
そうだ、確か。
昔大野さんはお地蔵さんに話しかけてそこから門ができたんじゃ？ってこないだ推察した！
「へ？閻魔様？いるなら助けてよ」
大野さんがそう言った途端。
大野さんの背中に赤の水の中に黒い墨を落としたかのような影が見えた。
「門、開いた」
相葉さんがポカーンとしてる。
鎌男が大急ぎで逃げようとした。
「大野さん！左前！10時の方向！」
「へ？ここ？が何？」
大野さんがスイっと踊るように左手を伸ばしたら、鎌男が大野さんの手に引き寄せられるようにヨタついた。
グエエエ、という断末魔の声がして、鎌男の幻影が半分に崩れて大野さんの後ろにどんどん吸い込まれてる。
「うわ……」
松本さんが眉をしかめる。
「ここ？この辺？」
大野さんが手を伸ばしたら、煙のように崩れて大きな塊が逃げようとした。
「ニノ、あのへん向かって斬って！」
松本さんの声に二宮さんがハッと我に返って、早九字で手刀を斬った。
「ノウマクサマンダバザラダンカン！」
ビュウ、とまた空を切り裂く音がして、崩れかけていた悪意の虫が粉々になる。
粉々になったあとは早かった。
大野さんの背後の赤と黒のマーブルの中に吸い込まれていく。
「あー……」
「……へ？何？どうなった？」
大野さん、全く見えないんだ。
「大野さん、悪霊退散できんじゃん……」
「何が？は？」
なるほど。
本人に自覚がなさすぎて正直使いづらい。
「鎌男、どうなった？」
「わかんない、消えた？」
周りを見渡してもなんだかピンとこない。
「鎌男って結局なんだったの」
相葉さんが誰に聞くでもなくつぶやく。
「人の心に入りこむ悪意ってことしかわかんないよ、Aは？もう平気？」
櫻井さんがそう聞いてきた。けどなんだか照れくさくて曖昧に頷く。
さっき好きとか言ってたな。
顔が見れない！
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作者名：よしの
| 作者ホームページ：
作成日時：2020年3月5日 16時
