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正面玄関に回ってみたら、開かないように板が噛まされていて、さらに鎖でドアのバーハンドルをぐるぐる巻きにしてあった。
ご丁寧に南京錠まで。
これは開かないわね。
早々に諦めて一階の非常口まで回る。
さっき鎌の男が入ってきたところ、なんだけど。
やっぱりあれは霊だったのかな。
壁とドアの間に鉄の棒がピッタリ噛ませられてる。とりあえずここを開けないと。
手で体重をかけて動かそうとしても全然動かない。蹴り上げても動かない。
まいったな。
どうしよう。
二階から入る？
非常口を見上げたら。
屋上に人影がちらりと見えた。
「誰！」
雨が目に入る。
上を見上げ続けるのも限界が。
頭をブルリと振って雫を飛ばしてまた上を見上げたら。
上からブロックが落ちてきた。
「ひっ！」
すれすれ目の前をブロックが落ちて、その衝撃で噛ましてあった鉄の棒がふっとんだ。
「……っ！」
鉄の棒が飛んで左肩に当たった。
でも！そのおかげでドアが開く！
外にいるのは危険。
中に入るのも危険だけど、上から何か落ちてきてそれに当たったら下手すりゃ死ぬ！
中に入って肩を押さえる。
雨もしのげて、ホッとした。
しばらく衝撃に耐えて、肩が動くか確認する。
骨に異常はなさそう。
打撲だな、ただちょっと左手が使い物にならない。しびれて力が入らない。
ドアを大きく開けて、その鉄の棒で反対側に噛ましておく。これでここから出入りできる。
この腕だともう窓からは出入りできない。
流石に右手だけでヒラリと飛び越えるなんて大野さんみたいなことできないし。
人の気配がしてハッと目を上げる。
階段の上から誰かが私を見下ろしてる。
「A……？」
ああ、その声は。
「相葉さん……」
「A、大丈夫？」
相葉さんが駆け下りて来た。
ホッとしたら力が抜けた。
「どうした？腕、怪我した？」
「うん……」
「濡れちゃって、んもー……」
相葉さんが私の頭をタオルでワシワシ拭いてくれる。
「A？」
みんながぞろぞろ降りてきた。
みんなの顔見てホッとした。
「マサトシくんは？いなくなってる」
松本さんが周りを見渡す。
「お母さんと会えたよ……」
「帰れた？」
「多分」
「Aがそう思うなら、そうなんだろうな、よかった」
あれ？なんかおかしいな。
ホッとして泣きたい。
「わ！A、どうしたー！なきべそAかわいいー！」
相葉さんが揶揄ったから、相葉さんのタオルを奪いとることにした。
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作者名：よしの
| 作者ホームページ：
作成日時：2020年3月5日 16時
