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「だめ、一人になっちゃだめ！」
「いや、だって」
「もしもう中に鎌の男が居たらどうするの！」
私の金切り声に皆が固まった。
「A、落ち着いて」
二宮さんが言う。
松本さんが静かに口を開く。
「さっき俺らが見たレインコート着た鎌の男、人か霊かはわからない、けど」
「……」
「Aがパニックになってなきゃ俺がパニックになるところだよ、それくらいの殺気だった……」
「……え？」
「俺がきゃーって言いそうなところをAが先に言ってくれたから冷静になった」
松本さんが少しひきつったように笑う。
「どこから入ってくるかな？」
「霊なら入り口塞いでも意味なくない？」
櫻井さんと相葉さんが不安そうに呟く。
「ちょっと待って？霊はここに入れないよ」
二宮さんがきっぱりと言った。
「どうして？」
櫻井さんが聞き返す。
「この病院、結界張ってるんだけどさぁ、霊、入ってこれないけど出れなくなってんの」
「つまり」
「この結界内で霊になっちゃったものは出ていけないんだよ」
「……入れないし出られない？」
「うん」
二宮さんが困ったように口を開く。
「どうやってるんだろう、何重にも結界張ってて、御札とかも使って霊が入れないようにすごい頑張ってる」
「……」
「そのせいで中の霊は出られない」
「でも霊、全然いないよ？」
相葉さんが不思議そうにいう。
「一番強いやつが喰っちゃったのかなー」
「喰う……？」
「言い方変えると、吸収しちゃったってことね、んとね、俺の女神様、低級霊を調伏して自分の使役にしてんの、それが式なんだけど」
「……うん」
「その式、女神様は自分の代わりに動かしてんの。自分の意のままに動かせる。俺はその力をちょっと借りてる状態」
「うん」
「変な言い方すると放し飼い。ちなみに閻魔様は自分の代わりにお地蔵さんが人の行いを見守ってるじゃん？」
「……うん」
「言い方変えたら分身よね。つまり、放し飼いとか分身以外に吸収ってのもあるってこと。自分の力を増幅するために中に取り入れる」
二宮さんが少し間をおいて、言う。
「この中に霊が全くいない理由ってそれじゃない？」
松本さんが頷く。
「それでいないのか」
「……」
「でもマサトシくんは、どうして吸収されなかったんだろう」
「これは想像なんだけど」
「うん」
「マサトシは多分鎌の男が嫌いで逃げてんだろうなきっと。生前会ったことあるのかもね」
二宮さんがため息とともに言葉を吐いた。
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作者名：よしの
| 作者ホームページ：
作成日時：2020年3月5日 16時
