115(06/17) ページ35
それからまた、おにいちゃんを避ける日々が始まった。
会わないのは簡単だ。
おにいちゃんは、多くて二週間に一度くらいしかこないし、私はバイト。
家にいるときはとりあえず、誰にも何も疑われないようにニコニコしていた。
私は嘘つき。
大学生になってからは、新しい生活が始まって、毎日がまたたく間に過ぎた。
興味のあることを勉強できるのが楽しくて、趣味の合う友だちもできた。
メグちゃんとはたまに連絡を取り合ってる。
田村くんとはまだ続いてる。
吉沢くんは、スポーツで大学に行って、モテモテらしい。
時々、思い出したようにAは元気？って聞いてくれてるみたい。
最初は不安だった大学生活も、楽しい勉強とたくさんの女友達との付き合いと、雑貨屋さんで始めたバイトに明け暮れて、すぐに２年が過ぎ去った。
友達に彼氏はほしくないの？って聞かれて、
好きな人がいるよって、アイドルの写真を見せたら、同じ趣味の子に誘われてコンサートにも行ったりした。
私だけの、自由な時間と生活。
家という足枷にどれ程囚われていたんだろう。
私がお父さんを支えなきゃ、寂しくないようにしなきゃ。
勝手に自分で自分を追い込んでたんだ。
肩の荷が下りた気がした。
おにいちゃんだって、きっとそうだ。
お母さんを守ってくれる人が他にいるというのはどれ程安心できるか、という。
私もそうだもの。
お父さんが寂しくなくて、帰ったら電気がついててご飯とお風呂が用意されてて。
良かったね、私も気が楽になったよ。
そう思う自分を否定できない。
私はひどい娘だ。
３年の時、寮をでて一人暮らしに変えてからは、もっとバイトを増やして、資格も取ったり、バイトと、テレビでアイドル見てキャーキャー言って、友達と意味もなくはしゃぐ。
おにいちゃんとの日々は遠く過ぎ去って、少し冷静におにいちゃんを思い出せるようになる。
おにいちゃんとは年に一度だけお正月に会うけど、私がおばさんとお父さんにくっついてて、おにいちゃんと二人きりで話す時間はあえて作らなかった。
「Aちゃん会うたびに綺麗になるけど、彼氏出来た？」
お母さんのぎこちない質問に、全員が息を呑む。
「片想いしてる」
「……」
「この人に」
「……え」
雑誌に載ってるアイドルの彼を見せて、なーんだ、って両親は笑ってるのに、おにいちゃんは笑わなかった。
雑誌を見下ろして、笑顔の彼をじっと見下ろした。じっと。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 4720人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「嵐」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：よしの
| 作者ホームページ：
作成日時：2016年5月31日 0時
