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「やめるって……友達も？」
「Aって残酷だよね？」
吉沢くんが、アハハってきれいに笑って立ち上がった。
「……あ」
「じゃあ、また明日ね！またお茶でも行こう……社交辞令だけど」
「……ごめんなさい」
吉沢くんが玄関先で、私の頭をぽん、とたたいて、ほっぺをぷにっとつねった。
「バイバイ」
吉沢くんの姿が見えなくなるまで見送る。
あんな優しい人を傷つけた。
どうして、好きになったほうが幸せな人を好きになれなくて、
誰も幸せになれない人をいつまでも忘れられないの。
家に入ろうとして、ふと、人の気配を感じた。
おとなりさんかな？
もう一度振り返る。
……これは、幻かな。
おにいちゃんが、私を見てる。じっと。
「……え？おにいちゃん！」
「……潤くんが、お前が真っ青な顔で薬局にいたっていうからさ、気になって」
「……」
「今日、お父さんもかーちゃんも、確か遅い日だよね、20日だし」
「うん、あ！おにいちゃん、家に入っ」
私の言葉を、手のひらで遮った。
「彼氏を家に呼べるくらい元気なら安心したよ」
「……彼氏じゃない」
「薬局で何を買ったかなんて、聞かない、聞きたくもない」
おにいちゃんがふふ、って笑った。
もしかして、気づかれてる？
「あれは！」
「ねえ、待ってて、って言ったよね」
「……」
「ほんとはさ、待っててってより、信じていい？って聞くべきだったんだよね」
おにいちゃんの目が、悲しそうにキラキラ光った。
言葉がでない。
「俺、お前のことどうしても信じられない」
「え」
「お前はさ、最初潤くんが好きだったのに結構すぐに好きなやつが変わった、お前の一番近くにいる奴にね」
「……」
「お前は、そばにいて守ってくれる人を好きになるタイプなんだよ、きっと」
「違う……」
「ねえ、俺、どうやって、お前のこと信じればいいの？俺もうやだよ」
おにいちゃんが、笑った。
悲しい笑顔。
「おにいちゃ……」
「今の俺らに信頼関係なんてある？」
「私……」
「お前のこと、信じていいの？ねえ、教えてよ」
「……私を、信じて」
「……何を根拠に？無理だよ」
おにいちゃんが、笑った。
「そんなに、信じられない？」
「うん」
「私だって、信じられない、カオルさんって誰？その人のとこにいるの？どうやって信じればいいの？」
「……わかった」
何がわかったの。
「もう、忘れて」
おにいちゃんが、くるりと踵を返した。
声が、出ない。
目の前が、真っ白に、なった。
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作者名：よしの
| 作者ホームページ：
作成日時：2016年5月31日 0時
