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おにいちゃん、学校休んで荷物取りに来た？
よっぽど私に会いたくなかったんだ。
会えなくて平気なの？
私、気が狂いそうだよ。
学校で会えるって言ったけど、あんなの会ってるんじゃない、見てるだけだよ。
片思いより遠いよ。
どうして？
もしかして、もしかしなくても、もうダメなのかなあ。
見てるだけの日々が続く。
そんなある日、吉沢くんが、一緒に帰らない？って言ってきた。
「……」
どうしよう。
断る理由も、もう何もない気がしてる。
おにいちゃんと思いが通じ合って、いっぱいくっついていっぱいキスした、あの２日間は。
もう現実味がなくなって、夢だったんだよ、と言われればそっちのほうが正しいと思えるくらい、私の中から消えていこうとしてる。
信じる、って決めた気持ちも。
少しの愛情も微塵も感じない冷たい目線に、きっとあの２日間をおにいちゃんは後悔してるのかもしれないって。
私なんかのために、生活までがらりと変える必要があったのかって、
きっと、なかったことにしたいんだろうなって。
いつの間にか、絶望がしっかりとした形になっていってる。
時々かわす視線に、少しでもまだあの日の名残りがあったら、私だって信じられたのに。
目は合わない。
合ったとしても、知らない子を見るような、なんの感情もない目。
おにいちゃんが動揺したのは、夏休みあけ再会した、あの一回だけだった。
「私、本屋さんに行きたいの」
「本屋？」
「うん」
「帰りに、お茶しよ？」
「いいよ！クラブ休みなの？」
「うん、顧問がちょっと風邪だって。しばらく試合もないし」
「そっかあ」
秋は寂しいの。
冬はあったかいんだよ。
イルミネーションとか、クリスマスソングとか、もこもこのマフラーと、コート着て、寒いねってくっついて。
秋は寂しいの。
だからつい。
吉沢くんと一緒に帰って、久々に、いっぱい笑った。
吉沢くんは優しくて、かっこよくて、時々天然で、メグちゃんが全力で推してくる。
いい子だから！付き合ったら？楽しいよ！
でもね。
私好きな人がいるの。
きっと、もうおにいちゃん以上に、好きになれる人なんて出てこないよ。
「俺ら、付き合わない？」
櫻書店に寄った帰り、近くのコーヒー屋さんで吉沢くんがそう言った。
「好きな人がいるから……」
「知ってて言ってるよ」
「……」
「こっち見てくれるの、ずっと待ってる」
吉沢くんの笑顔があったかくて、待たれても困る、と言えなかった。
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作者名：よしの
| 作者ホームページ：
作成日時：2016年5月31日 0時
