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相葉先輩が、ふーって大きなため息を吐く。
「全く帰ってないの？」
「はい」
「じゃあ今日もカオルさん家からきたってこと？」
「カオルさん……？」
「知らない？」
こくり、とうなづいたら、相葉先輩が、こまったな、って言った。
困らせてる！
慌てて謝る。
「すみません！もういいです」
「Aちゃん」
「もう、いいんです……二宮先輩が、私を迷惑ってことなら、もう、追い掛け回すのやめます」
「おにいちゃんでしょ？」
「……おにいちゃんじゃない」
「……」
「おにいちゃんなんかじゃない」
涙をごしごしってぬぐって走り去ろうとしたら、櫻井先輩にぶつかった。
「うおっと！」
「すみません」
「泣いてる？」
「すみません」
「相葉くん泣かせた？」
「俺じゃないー！」
二人ともおろおろしてる。
「ニノは？」
「……」
「兄妹げんか？」
「……そうなるのかなあ」
「早めに仲直りしろ、って言っておくよ。妹を怒らせると後が怖いからね。じゃあまたー」
櫻井先輩が、あは、ってちょっと笑って立ち去った。
相葉先輩は困ったみたいに笑って、手を振ってくれた。
なんとなく、家ではお父さんとおばさんがいるから話さないことにしてるだけで、学校に行ったら普通に接してくれる可能性を期待してたのに。
ため息を吐いて、気を取り直して教室に向かおうとしてたら、「Aー」って声がした。
メグちゃん。
「おはよ！」
「あー……女の友情より男を取った人だ……おはよう……」
「ごめんごめん！」
メグちゃん、なんかつやつやしてる。
「いいのよ別に。彼氏とはうまく行ってるの？」
「ばっちり！」
ああいいなあ。
好きな人に好きといえて、堂々と一緒にいれて。
普通の恋、私もしたかったな。
「夏休み、ずっと一緒だったよ！幸せな夏休みだった」
「バイトで一緒で休みの日にデートもして、飽きない？」
「全然」
そうだろうね。
わかるよ、飽きるわけない。
家に帰って毎日顔を突き合わせてたのに飽きるどころかもっと一緒に居たくて。
学校でも会えたら嬉しくて。
「学校始まってちょっと寂しくなるね？」
笑いながらそう言ったら、大真面目にうん、ってうなづくメグちゃんに苦笑いした。
「同じクラスだったらよかったのに」
「でもそんなに一緒にいて、大学とかで離れちゃったら冷めるかもよ」
「そんなわけないよ」
離れちゃったら、冷める、
自分で言ったセリフに、小さく動揺した自分がいた。
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作者名：よしの
| 作者ホームページ：
作成日時：2016年5月31日 0時
