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そのままおにいちゃんは、夏休みの間、一度も戻って来なかった。
おばさんとは電話で連絡を取り合ってるみたいだ。
一度も帰ってきてはくれなかったし、
私には、一度も連絡をくれなかった。
こんなに長い夏休みがあったかな。
過去最高に長く感じる夏休みだった。
腕の火傷は、結構綺麗に治った。
けど、やっぱり色素沈着は残った。
ギザギザ模様みたいなの。
これももう少し薄くなると思いますよと言ってもらえてホッとした。
何にもない夏休み。
メグちゃんは、吉沢くんと仲良しのお友達の彼氏ができて遊んでくれないし。
吉沢くんからは、夏休みの間、2回電話があった。
好きな人がいる。
一度目は堂々と答えたけど、二度目に連絡があったとき。
「声、元気ない」
そう言われて絶句した。
「そうかな」
「うん。なんかあった？」
「失恋、したのかなぁ？わかんない」
「気晴らしにどこか行こうよ」
さびしい。
ぱーっと遊びたい。
気晴らししたい。
けど。
「おばあちゃんちに、かえるから」
なんて嘘をついた。
一回目の時みたいに、好きな人がいるからって言えなかった。
長い夏休みが終わって、やっと始業式が来た。
どうして着拒してるの？って聞きたくておにいちゃんを下駄箱で待ってたら、おにいちゃんがお友達と団体で登校してきた姿が、みえた。
顔を見た途端、会いたかった、って涙が出そうになる。
「……あ」
目があった。
おにいちゃんの茶色い目が、ゆらりと揺れる。
「Aちゃんじゃん！久しぶりー」
相葉先輩がニコニコしながら私に手を振ってきた。
「あ、お久しぶりです、あの、おにいちゃん……」
「ん？ニノ？あれ？」
相葉先輩がキョロキョロして、先に行こうとしてるお兄ちゃんに、ニノー、と呼ぶ。
おにいちゃんの背中。
私を拒んでるかのような。
「待って、おにいちゃん」
「……」
「待って！」
悲鳴みたいに叫んだら、周りがパッと私を見る。
「おにいちゃ、……二宮先輩！」
ぴくりと背中が動いたけど、そのまま。
少し困ったように首の後ろをするりと撫でてる。
「……どうして？」
「Aちゃん、あのさ」
相葉先輩が私を見下ろす。
「はい」
「ああ、泣かないで」
相葉先輩も、泣きそうな顔で言う。
「私のこと嫌になったのかなぁ？」
「……」
「それとも、もう妹なんてうざいだけで、いらないのかなぁ？」
「Aちゃん…」
「どうして避けるの？理由がわかんなくて……」
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作者名：よしの
| 作者ホームページ：
作成日時：2016年5月31日 0時
