キミがやさしい人だから 5 (ページ9)

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翌朝、俺は目覚ましのアラームよりもほんの少しだけ早く目を覚ました。昨日までの体調不良が嘘にように身体が軽い。数日寝込んで鈍ったを早く動かしたくてうずうずしている感覚すらあった。いい事だ。だけど何が魚の小骨のようにひっかかっている。

「…………あ！」

その正体を突き止めた俺は急いで枕元に転がっているスマートフォンに手を伸ばした。案の定、そこには未読のメッセージが一件。

『家につきました。お大事にね。おやすみなさい』

Aちゃんからだった。

「何やってんだよ、俺……」

頭をかかえて、こればっかりはつい声に出した。自分から連絡を頼んだくせに寝落ちしてしまった。最悪だ。

『おはよう』
『連絡くれたのに返事しなくてごめん！寝ちゃってた』
『Aちゃんのおかげでだいぶ体調良くなったから今日は行くよ』

立て続けにメッセージを送ってしばらく画面を見ていたけれどメッセージに既読はつかない。とりあえず画面を切り替えてきょもにも今日は出勤する旨を伝えると、こちらはすぐに「りょーかい」と短い返事がきた。最後にもう一度だけAちゃんとのトーク画面を見るけれど、やはりまだ未読のままだったので諦めて俺は朝の支度にとりかかった。

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いつの間にか朝の駅でAちゃんの姿を探すのが癖になっていた。けれど大学の最寄り駅で本数も多いこの駅では中々タイミングが合うことはなかった。今日も結局一人で電車に乗り込む。

スマホを見ながらアルビコッカの最寄り駅までの時間をつぶすのは毎度のことだ。だけど今日は落ちつかないのはAちゃんからの返事が来ないから。Aちゃんが怒る……ところはあまり想像がつかないけれど、呆れられてはしまったかもしれない。

気持ちが沈みかけた所でメッセージの通知が画面に表示された。それを見るなりタップする。

『おはよう。大丈夫、そうじゃないかと思ってたから気にしないで！慎太郎君が元気になって良かった』

何かのキャラクターの笑顔のスタンプとともにそう送られてきた。ほっとして顔がほころぶ。すぐにメッセージを返したい衝動にかられたけれど、もうすぐ顔を合わせるのだし、と思いその場で返事は返さなかった。昨晩のやらかしは頭の隅においやって、今は早くAちゃんに会いたいと思った。