キミがやさしい人だから 5 (ページ8)

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Aちゃんを見送った後、再びベッドに潜る。用意してもらった新しい保冷剤で文字通り頭を冷やす。

「あ゛ーーーー」

——何やってんだ俺！？！？

流石に大声で独り言を言ったりはしないけれど思わず発した喚き声。まだ掌に残っている、柔らかく滑らかなAちゃんの手の感触に頭を抱えた。

我ながら熱で頭がやられてたんだと思う。Aちゃんに、お見舞いというかお遣いを頼んだのは正直多少は打算的な気持ちもあった。やさしいAちゃんならきっと引き受けてくれるんじゃないかって。

久しぶり体調を崩してけっこうしんどくて、種類は違えど以前にしんどい時に一緒にいてもらって救われた所為かとにかく無性にAちゃんに会いたい気持ちが膨らんでいった。幸いと言うべきか不幸にもと言うべきか、俺の家は本当に駅の近くで"帰り道の途中"と言って差し支えなかったのも「だから」と自分に言い訳をしやすくした。

案の定Aちゃんはあっさりと引き受けてくれて。でも最初は本当に顔を見たらそれで満足するつもりだったんだ。困らせたくない。嫌なおもいをさせたくない。そのはずなのに。

——Aちゃんの特別になりたい。

そう、願ってしまった。それだけならばまだ良かったのに、Aちゃんに触れたい、ってそう思ったのを抑えられなかった。

今までだって恋愛をしてこなかった訳でもないのに、こんなのは初めてで。なにやってんだ。だけど。どうしよう。やっぱり。ぐるぐるとぐるぐると色んな想いが頭の中を巡っている間に意識が遠のいてゆき俺は深い眠りについた。