キミがやさしい人だから 5 (ページ1)

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慎太郎君の部屋は、本棚に並べられた漫画のラインナップや無骨というか雑多な雰囲気から強く"男の子らしさ"を感じる部屋だった。予想通り私の部屋よりもだいぶ広いその部屋はベッドの横のローテーブルの周りに座椅子が二つと隅に重ねられた座布団が何枚かあって、前に慎太郎君がよく友達が遊びにくると言っていたのを思い出した。

今自分が男の子の部屋にいるという実感みたいなものが湧いてきた。大学に入ってから色恋沙汰に無縁だったどころか仲が良い男友達すらもいなかった私が男の子の部屋に来るのが久しぶりだった。最後に男の子の部屋に上がったのは…………北斗の、部屋だ。

「…………」

勿論、私はそんなつもりで慎太郎君の部屋に上がった訳じゃないし、慎太郎君だって絶対そんなつもりで私を部屋に上げた訳じゃない。そんなことは十二分に理解した上で、それでも今更になって緊張で身体が強張った。

「……Aちゃん？」

それが顔にも出ていたのだろうか、部屋の真ん中辺りまできた所で足を止めた慎太郎君が心配そうに私の名前を呼んだ。

「あ、男の子の部屋って久しぶりだから緊張しちゃって」
「……そう、なんだ」

慌てて答えると、慎太郎君の表情が翳る。普段はあまり見ない慎太郎の元気のない表情を見て、私は自分が何しにきたのかを思い出した。

「買ってきたおにぎりはすぐ食べる？後にする？」
「せっかく買ってきてもらったしすぐ食べるよ」

私がおずおずと尋ねるとハッとしたような表情になって慎太郎君が答えた。