【歌/い/手】最下位の私はお気に入りになった（らしい）【実/況/者】

涙 ページ48

天月side

保健室へ向かって廊下を歩いていると、手洗い場から水が流れる音がした。


近づいて音が大きくなるにつれて、
そこに立って顔を洗っている人影がわかってくる。


96ちゃんだった。


なぜここに？Aと坂田は？

という疑問が頭に浮かぶが、それを知るには話を聞く以外方法がない。


あ「96猫〜！他の二人は？」


近づいて話しかけると水で濡れた顔をこっちに向けた。


その目は赤く腫れていて、今は水で濡れているため泣いているかわからないが、
ついさっきまで泣いていたことは確かだろう。

まだ肩が微かに震えてた。


さっきAに抱きついていたときも泣いていたので、そこまで驚きはしなかったが
今も泣いているとは思わなかったので俺は反応に困ってしまった。


96「あ、あまちゅ、どうしたの？」

あ「……あ、えっと、俺はAの様子を見に来たんだけど、そっちこそどうしたの？」


なんだかぎこちない会話になってしまったが、96猫は続ける。


96「さっき泣いちゃったし、顔洗いにいこうかなーって思って！」

あ「そっか、」


明らかに無理してるのが伝わってくる。

そのまま適当に流すか、話を聞くか。

考えているうちに96猫は顔を拭いて、戻ろうとする。



……もう、さっきみたいに後悔はしたくなかった。


あ「ちょっと待て」


俺は96猫の腕を掴んだ。

びっくりしたように96猫は振り返る。
拭いたはずのその目にはまた涙が浮かんでいた。


あ「……なんで泣いてるの」

96「っと……これは、顔洗った時の水、」

あ「誤魔化さないで。さっき拭いてたじゃん。なんかあったんでしょ」

96「……」

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