【ONEPIECE】泡の淡【赤髪海賊団】

泡が25つ ページ37

『ん”ん〜』

寝返りを打ち、多少の唸り声をあげる。脳は起きているのに、目が開かない。周りからは、騒がしい音が聞こえ 目を擦りながら何事かと重たい体を起こす。

『え…なにこれ』

まだ夢なのかと疑うほどの炎に包まれた街。
嫌な思い出がフラッシュバックする。
まさか、まさかまさか。そんなことがあっていいのか。
ここには、夢が沢山あるんだ。人々の思いが、未来が！

震えた脚で立ち上がり、船を目掛けて一目散にかけて行く。僕と距離があるもののすぐ近くにいるようにも見える、建物より何十倍も大きなバケモノ。

息が荒くなりながらも、自分が出来る全速力で駆け出していく。シャンクス達は、ウタは、ゴードンさんや街のみんなは、一体無事なのか。焦りに不安を重ね涙が出そうになる瞳を必死にこらえる。

あともう少し、あともう少しで船に着く。
あと、もう少しで…！

「い、いや！だれか！だれかぁ！」

その声を聞いた途端に、走っていた脚はピタリと止まった。声のした方を向けば、小さな男の子を抱えた女性が今にも炎と共に崩れそうな家の中で叫んでいた。

服の裾をギュッと握り、脳がショートする。
助けたい。たすけたい。たすけたいのに、体が動かない。
ダメだ、こんなんでどうやって医者になるんだ。
手の届く範囲の全ての人を助けるんだろう、A！！！

唾を飲み込み、覚悟を決め一気に家に入り込む。幸いな事に燃えているのは女性がいる2階だけで１階にはまだ火がついていない。階段を高速で駆け上がりドアを開ける。

『たすけに！きました！１階はまだ火がついていません、今すぐ外へ行きましょう！』

そう言って、女性の手を引き階段を駆け下り外へ出る。
その際、燃えた家の一部が落ちてきたが女性と子供を庇い、僕がかすり傷程度を負っただけで済んだためそのまま街を出ようと走る。

「A！」
『ベックマン！！！』

息を切らしながら無我夢中で走れば、汗をかき酷い顔をしたベックマンと合流する。探していたんだ、と物凄い血相で言われるが僕と女性を交互に見て「とりあえず船へ戻ろう」と言ってくれた。

急いで船へ戻ろう、そうして全員が前を向いた瞬間に僕が掴んでいた女性の手の感覚が無くなった。
振り返れば、バケモノに捉えられる女性と子供。
手を伸ばす女性の手に、僕も急いで手を伸ばすがギリギリのところで届かず、どんどん遠くなっていく。

ベックマンはその様子を見て、今度はこちらに攻撃が来ると察したのか僕を抱えて走り出した。

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