日常103 賭けてみないか? ページ26
「なら、科学者殿も一緒に来ると良い。」
少女の言葉に科学者は目を見開いた。
しかし、レクスとラトローはやはりかといった感じであった。
まだ出会って少ししかたっていないが、二人は、少女が人に手を差し伸べることをやめられないたちであることは身をもって理解していた。
「まぁ、一緒に来るかはゆっくり決めて良い。わしはカメリアと言ったな。あの白い花が気になって仕方がないんじゃ。」
少女はそういうとカメリアの畑へ走って行ってしまった。
テーブルに三人が取り残される。
「まぁ、あれだ、余は来るなら歓迎するぞ。」
「一人くらい増えても変わらないしな。」
レクスとラトローは科学者が一緒に来ることに反対の意思はないらしい。
科学者はまた驚く。
てっきり二人には反対されると思っていたのだ。
「…何故私に構うんだ。」
科学者は純粋に疑問に思ったことをぶつける。
人と会話をした記憶など彼にはない。故に他人の気持ちがわからないでいた。
「似ている気がしたんだ。」
レクスの言葉にラトローが反応する。
「同じ穴のムジナってか。」「さてな。」
そんな二人のやり取りに科学者は思う。
_くだらない。
人はいつか人を裏切る。今日話せて楽しかったことは事実だが、失うくらいならば最初からいらない。
科学者は、いつの間にか臆病になってしまっていた。
科学者の瞳が揺れる。
それを見てレクスは言った。
「願いに囚われている。」
「何故わかる?」
その問いにラトローが答える。
「目でわかるさ。」
今の自分と同じ目をしているからだ。
_何かを失ってガラス玉のようだ。
図星を突かれ、科学者は下を向きながら己の願いを言う。
「叶うなら、もし、叶うなら…いつか故郷が見たいな。」
「なら決まりだ。」
「あるのかもわからない。」
「此処にいても変わらない。」
「では虚ろなこの船が何処へ着くのか」
_賭けてみないか?
レクスとラトローはまだ悩んでいる科学者にそう問いかける。
二人だって賭けてあの少女に着いて来たのだ。
あの少女はきっと救いをもたらしてくれる存在である…と。
根拠なんてないが、感じたんだ。
丁度その時少女が帰ってきた。
「科学者殿、決まったか?」
少女は科学者に問いかける。
科学者は決めた。
_彼に この少女に賭けてみると。
「あぁ。私も連れて行ってくれるかい?」
「勿論じゃ。旅に仲間は多いほうが良いからの。」
では名が必要じゃの。
_名はアサナシオス、アーサでどうじゃ?
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大阪の女 - Stellaが良すぎましたありがとうございました (2023年3月29日 9時) (レス) @page29 id: f50a0ac3bb (このIDを非表示/違反報告)
蒼羽 - 初めまして。こんにちは(^^)芋けんぴさんの作品楽しく見させていただいてます。話の続きも是非読ませていただきたいです。 (2022年10月12日 16時) (レス) @page50 id: 7d7f47de01 (このIDを非表示/違反報告)
蒼羽 - 初めまして。こんにちは(^^) (2022年10月12日 16時) (レス) @page50 id: 7d7f47de01 (このIDを非表示/違反報告)
芋けんぴ(プロフ) - ねむさん» ねむ様、コメント及びご指摘をありがとうございます。完全なる打ち間違えです…。そのせいで寂雷さんが凄くネガティブな人になってました…。現在、訂正させていただいています。意味までご丁寧に教えていただき勉強になりました。改めてありがとうございました。 (2021年7月19日 15時) (レス) id: e6e71631e0 (このIDを非表示/違反報告)
ねむ(プロフ) - 日常107出発のmourningは悲嘆,哀悼 、哀悼の意を表すこと、喪服,喪章という意味(コピペ)ですよ。朝はmorningです。 (2021年7月19日 9時) (レス) id: 2b048548d5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:芋けんぴ | 作成日時:2020年8月3日 20時