コイノウタ (ページ10)

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さしも知らじな燃ゆる思ひをページ10

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2こ下で幼なじみのAは
中3の夏に遊びに行った東京でスカウトされてモデルになると

中学卒業と同時にひとり上京した。

上京する数日前。

毎年ラムネを冷やした川

学校帰りに日が暮れるまで遊んだ公園

ふたりの秘密基地だった学校の裏山

よく買いに行った駄菓子屋

俺ん家

Aん家

懐かしんで遊んだり、思い出話を沢山した。

時折寂しそうな表情をしながらもいつもの笑顔を見せとったのに別れ際になって

泣きながら

「まぁくんっ、好き、なのっ」

ぐちゃぐちゃの顔で、俺の手を掴んだ。

「迎えに行く」

「待ってる…絶対、だよ？」

「絶対」

スカウトされたと聞いた時

俺の知らんAになるんやと思ったら急に寂しくなって、あぁ、俺はAが好きなんやと気付いた。

もし今俺が好きだと言ったら、Aは上京するのをやめてまうかもしれん

昔から雑誌を見て「モデルさんになってみたい」と言ってた夢を捨ててまうかもしれん

そう思ったら言えんかった。

「今日のゲストはAさんです！」

「Aです、よろしくお願いします」

上京して割とすぐに人気モデルになって

二十歳を過ぎると新しいことに挑戦する、とタレントとしてバラエティに出たり女優としてドラマや映画にも出演して

遠い存在のように思えた。

たまにする電話で楽しそうに仕事の話をするAを
抱きしめたいと強く思いながら、もう誰かのものかも知れんと

怖くもなった。

「芸人さん？まぁくん凄い！いつか共演しようね」

変わらず俺のことを「まぁくん」と呼んで応援してくれる
Aの為に売れるように頑張った。

「見取り図リリーに、ある方からメッセージが来ています」

『こんにちは、Aです』

3回目のM-1で3位を取ってから、有難いことに東京での仕事が増えた。

『実は幼なじみなんです。私がモデルになるって言ってから今まで、両親よりも応援してくれてるんですけど…』

「Aちゃん幼なじみ？！」

「実は」

『まぁくんは覚えていますか？

私が上京する少し前
「絶対迎えに行く」って言ってくれたの。

まだ、待っていてもいいですか？』

思わぬメッセージ

スタジオにおる人達の沸く声が遠くで聞こえる

俺だけがいつまでも、燃えるような感情を抱いてるんやろうって思っとった、、

もう少しだけ、待っとってな

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