コイノウタ (ページ9)

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しのぶれど色に出でにけりわが恋はページ9

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「おはようございます、リリーさん」

「Aちゃんおはよう」

私が働く東京の劇場で最近出番が多い見取り図さん。

「次から気をつけて」

「はい…すみませんでした」

いつもはしない小さなミスをして上司から注意された。
私が悪いのはわかってる。あんなに言わなくても、

「あんなに言わんでもええのにな」

「えっ？」

「大したミスちゃうやろ？」

振り向くと見取り図のリリーさん、だったかな？

「ミスはミスですから」

「仕事丁寧やし気利くし、俺とモリシは応援しとるよ」

「ありがとうございます」

「何ちゃん？」

「清水です」

「俺と同じなんや、下の名前は？」

「あ、えっと、Aです」

「Aちゃんな。またこっち来た時はよろしく」

それが私とリリーさんの最初の会話だった。

こんないちスタッフの私のことを見てくださっていて
しかも爽やかな笑顔で応援してる、なんて…

「Aちゃんは今日も完璧やな」

「えっ、そんなことないですよ」

「リリーは毎回Aちゃんの仕事の邪魔しとるな」

来ると必ず私に声をかけて下さるリリーさんと
その様子を盛山さんが笑って見るのもお決まりになった。

見取り図さんの出番までにやる事を済ませ、袖からこっそり漫才を見る。おふたりの楽しそうな掛け合いに元気が貰える。

「ありがとうございました〜」

「お疲れ様でした」

「ありがとう」

「Aちゃん」

「はい？」

舞台袖でおふたりを迎えるとリリーさんに紙を渡された。

「「乾杯」」

あの紙には［今日ご飯行こう］と番号が綺麗な字で書かれていて散々迷った挙句、連絡して今に至る。

「ずっとAちゃんとご飯したかったから嬉しいわ」

「そうなんですか？」

「だってAちゃん、俺のこと好きやろ？」

「えっ…」

思わぬ言葉にフリーズするとリリーさんは笑って

「色んな芸人が言ってたで。
　Aちゃんは俺と喋った後いつも嬉しそうやって」

まさか、そんな、

「俺もAちゃんのこと、気になっとったから嬉しい」

「…うそ、」

「嘘ちゃうよ」

私なんかに好かれてるなんて迷惑だろうと

隠していたのに
　

この気持ちを手離そうとしていたのに

「今度デートしてな」

そんなことを言われたら

「はい」

もっと好きになっちゃうよ、リリーさん。

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